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インタビュー

2019.04.24


− 特集 − 作家は語る 日本画家 武蔵原裕二先生


動物たちがくれるあたたかさを

[温もりのなかで 第3回 武蔵原裕二 日本画展 
2019年5月22日(水)→5月28日(火)開催 
松坂屋名古屋店本館8階美術画廊
 10時→19時30分 最終日は16時閉廊]

動物たちのリアルな描写と豊かな表情を日本画で巧みに表現する、武蔵原裕二先生の個展が5月22日(水)から開催されます。
いくつかの絵画教室で講師もされている武蔵原先生。インタビューでは動物を描くための取材についてや描き方のポイントなども質問。動物を観察するのがよりおもしろくなるようなお話とともに、今回の個展についてお伺いしました。

心がくすぐられるもの それが「動物」だった

動物の仕草や表情、格好、形や模様に魅力を感じるのはもちろん、フワフワとした毛並みなど、かわいい、かっこいい、おもしろい、そういったところに思わず触りたくなる衝動を感じます。「動物を描くようになったきっかけ」をよく聞かれるのですが、特にきっかけのようなものはありません。好きだから自然とモチーフとして選んでいたという感覚です。

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「王」

大きな動物のドテッとした感じも、小さな動物のちょこまかした感じも好きですね。特に好きなのは白くて大きな動物で、シロクマ、ホワイトタイガーやホワイトライオンなどの白変種を好んで描きます。日本画で描くようになったのは美大に入ってから。それまでは日本画に触れたことがなく、知識もありませんでしたが、日本画科の見たままを描く “写実” や “細密描写” といった受験内容に惹かれて専攻しました。

表現するのは動物と過ごす楽しさ

動物の取材は全国各地に行きます。名古屋の人は動物園=東山動物園をイメージすると思いますが、動物園ごとでかなり違うんですよ。描きたい動物の展示の仕方(動物の見え方)で動物園決め、何日か泊まりで出かけます。着いたら開園から閉園までべったりです。そうすると、園で動物がどのように過ごしているのか一日の行動パターンがわかってくるので、空いた時間は他の動物を見に行ったりします。

描くときに取材していては遅いですし、思うような取材ができないときもあるので普段から情報を蓄積するようにしています。特に動物の子どもはタイミング次第なので、生まれたときに取材をしておかないと描きたいときにはどこにもいないケースがありますから。

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「おにごっこ」

現場ではとにかく眺めて観察です。こちらが求めるポーズをなかなかしてくれないのは当たり前。そのかわり、思いもよらないポーズをしてくれることもあります。気長に待つことですね。動き回る動物は風景や植物などと違い、しっかりと描き込んだスケッチを仕上げることは困難です。要点を絞り、それぞれのクロッキーやスケッチをとったら、それらをもとに形を起こして作品にします。

動物を描くこと自体は大変な作業で、楽しいというよりは必死という感覚です。でも見たり、戯れたり、動物と一緒に過ごす時間はとても楽しい。その気持ちは大切にして描いています。

描く前に、まずはその動物の生態を知る

私が動物を描き始めた頃に比べて今の動物園は大きく変わりましたね。以前は、狭いし遠くて見づらく、動物たちも多少ストレスを感じているように見えました。ですが旭山動物園の行動展示を機に、全国的に変わってきたように思います。アクリル越しに間近で見ることができたり、触れたり。その動物の習性や能力を見ることができるように工夫され、取材もずいぶんしやすくなって幅も広がりました。

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「翔」

動物を描くことで大切なのは、まずその動物のことを良く知るということ。描き慣れていない人は動物の毛や模様など表面的なところに目がいき、輪郭で形を見てしまいがちです。そうではなく、骨格から理解する。人でいう膝やかかと、肘や肩、骨盤などがどこにあるのか、指が何本でどういうふうについているのかなどです。

なにより、動物は生息地や環境、能力などに適した体つきになっています。そういったことから模様や体の仕組みを理解していくと、形もより見えてくるようになりますよ。動物園には説明パネルもありますし、図鑑やインターネットでも情報が入手できますから、自分で調べられる範囲はしっかり調べてから描いています。

今回の展示について

落ち着いた色を好んでいるので、真っ赤な背景の「竹虎図」や、箔を生かした背景の「おにごっこ」などの原色を使った作品は、今までの私にはない作品になっていると思います。また、今回は以前から挑戦したかった画材 “絹” に描いた初めての作品を3点出展します。普段よりこだわっている綺麗なぼかしや、臼塗りを重ねる手法に適した画材ですので楽しみにしていてください。

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「竹虎図」

その他、第1回より松坂屋の個展に合わせて作品にしている、遊び心を入れた「シマリスシリーズ」も、新たに描いた動物ではオジロワシ、アヒルのヒナの作品もあります。今回は規定のサイズではない長細い画面の作品が多めです。
憧れの第一画廊で個展を開催させていただきます。動物からもらう温かな感覚が、わたしの作品からも感じていただけたら幸いです。

描かれた動物たちに込められた愛情。見る人の眼差しも温かくさせる武蔵原先生の絵を見にいらしてください。

プロフィール

武蔵原裕二先生

1976年 岐阜県に生まれる(その後、愛知で育つ)
2000年 愛知県立芸術大学美術学部日本画専攻卒業
2002年 愛知県立芸術大学大学院美術研究科日本画修了
第87回院展初入選
2009年 日本画二人展 (松坂屋名古屋店)
2011年 風雅の会 (松坂屋名古屋店、大丸心斎橋店、松坂屋銀座店)
2012年 個展-まなざしの向こうに- (松坂屋名古屋店)
個展-白き王国- (池袋東武百貨店)
2013年 個展-ちいさな足跡- (アートサロン光玄)
2014年 若鶉会 (日本橋三越本店、名古屋三越)
「どうぶつ図鑑」展 (郷さくら美術館東京)
2015年 個展-紋- (松坂屋名古屋店)
「ワン・ニャン・鳥さん大集合」展 (郷さくら美術館東京)
個展(西武旭川店)
2016年 個展-ちいさな歩み- (日本橋三越本店)
美しき花鳥風月 現代日本画名品展 (松坂屋名古屋美術館、北海道立釧路芸術館)
2017年 個展-鼓動
(池袋東武百貨店)
2019年 第7回桜花賞展 (郷さくら美術館東京)
個展-温もりのなかで-(松坂屋名古屋店)
現在 日本美術院院友

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