Vol.36 四季の美─冬の模様
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雛形本雛形本とは、流行の小袖模様や意匠を描いた木版刷りの冊子です。寛文期(1661~73)以降、江戸中期を最盛期として数多く刊行されました。江戸時代のいわゆる「小袖の見本帳」である雛形本は、小袖の背面図を中心に、文様や技法、配色などを記すのが一般的な形式でした。出版された総数については諸説ありますが、再版を含むと200種弱ともいわれています。松坂屋はその約半数を所蔵しており、コレクションとしては最大級です。前期展示衣 裳裂は ご いた も よう こ そでぎれきれ紅色の繻子地に羽子板が描かれた小袖裂。描絵により若松と笹が描かれた羽子板はアップリケにより表され、色糸・金糸の刺繍の技により羽が表されています。(冬模様=羽子板)ひし   ゆき もち だけ も よう から おり のうしょうぞく ぎれ菱と雪持竹が表された唐織能装束裂。唐織は、能装束の中で最も豪華で、縫取り風の多色な紋織物の一種で、主に女役の表衣として使用されます。(冬模様=雪)※描絵とは、墨や顔料で直接生地に模様を描く技法。しゅ す じはやり後期展示後期展示たき  ゆき も   だけ も よう こ そであさ ぎへいけん じ浅葱色の平絹地に、白上げ、友禅、墨絵などを用い雪持ち竹と滝が表された小袖。竹に雪が積もった様子が描かれた冬の景を表しています。この小袖は雛形本「雛形吉野山」に雪竹として掲載される図によく似た意匠で、この図を参考に制作したものと考えることができます。(冬模様=雪)※平絹とは、表面に凹凸がない平織りの絹織物。滝に雪持ち竹模様小袖 (江戸中期~後期)みず べ せっ けい も よう こ そで紫色の縮緬地に水辺の冬景色が表された小袖。白上げを基調とし、色糸・金糸の刺繍により舟と冬の季語でもある鴛鴦を描き、雪をかぶった松竹梅と芦が全体に配されています。白上げによる多様な雪表現に、糊の技術がとても生かされた小袖です。(冬模様=鴛鴦・雪)ちり めん じおしどり水辺雪景模様小袖 (江戸後期) ゆき も   しば がき  ばいじゅ も よう こ そでさ や じとうりゅうしっぽう とき わ紅色の紗綾地に雪の積もった柴垣と梅が描かれた友禅染めの小袖。絞り染めにより雪、友禅染により梅と柴垣、紅葉が描かれ、絞り染めの輪郭はそのまま活かし、積もった雪が効果的に表されています。この小袖は雛形本『当流七宝常盤ひいなかた』に「雪柴かきに梅」として掲載される図によく似た意匠で、この図を参考に制作したものと考えることができます。(冬模様=雪)※紗綾地とは、平織りの地に綾織りで文様を織り出した光沢のある絹織物。雪持ち柴垣に梅樹模様小袖 (江戸中期)ゆき も   やなぎ  かさ も よう こ そであさ ぎりん ず じ浅葱色の綸子地に、雪持ち柳に傘、吉祥のモチーフである鶴が描かれた小袖。激しく枝を揺すられる柳と雪を白上げで表し、友禅染による傘と、鶴が刺繍の技法により、風雪の景が表されています。(冬模様=雪・鶴)※白上げとは、糊防染や絞りなどで模様を白く表す技法。雪持ち柳に傘模様小袖 (江戸中期)羽子板模様 小袖裂 (江戸前期)菱に雪持竹模様 唐織能装束裂 (江戸中期)ひながたみやこ ふ じ雛形都の富士宝暦10(1760)年(冬模様=南天の実)ひながた よし の やま雛形吉野山明和2(1765)年(冬模様=雪)

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