ー化身ー 松下雅寿 日本画展
ー化身ー
松下雅寿 日本画展
2025年10月8日(水)→14日(火) 営業時間:10時〜19時 ※最終日は16時閉廊
たとえばある風景を目の前にして、それを絵にしたい、と思うきっかけ。それは、外形への興味など、表面的な事象だけではないはずです。その場で湧きおこる制作者の感情なり、また受けとめた気の流れなども、作品にしようとする動機として、大きく寄与することと思われます。
そうした主観に基づく、視覚ではとらえられない制作の構成要素の表出を、いわゆる「写意」と呼ぶのであれば、近年の松下氏の仕事には、自らが感得した見えないものを意図的に可視化して画面を構築する試みがますます冴えを見せていて、すなわち「写意」を大いに感ずるところであるのです。
背景として考えられるのが、師と仰ぐ手塚雄二氏による、東京上野は東叡山寛永寺の創建400周年を記念しての、根本中堂天井絵という6×12メートルの大画面制作、足掛け5年にわたる壮大なプロジェクト。そこに松下氏は助手として参画しました。自身の画業と並行して、天井絵に携わることへの困難も少なくなかったかもしれません。しかし、師匠と共に試行錯誤を重ねながら、超大作を完成させていく過程を経験した年月は、氏に大いなる実りをもたらした—その証左の一つが今回の個展、と言えるでしょう。
師匠が容易ならざる努力をもって天井絵に躍らせた龍の姿は、向き合い続ける時を閲して、松下氏のこころの奥に深く刻み込まれました。そして、想像上の産物であるはずの龍は、あたかも目にしえない氏の情念を昇華させるかのように、富士にも、那智の滝にも、雲となり風となりながら空を舞うのです。
自らの脚で山の頂に立ち、轟く滝の音、ご神木の荘厳さに触れ、綿密な取材を敢行し生み出された力作の数々。はたして画面の中で「化身」を遂げているものは何であるのか。
作品それぞれが、龍の如く自在に思いを遊ばせていただく縁よすがとなりましたら幸甚です。
大丸松坂屋百貨店
これまでは山や海といった、いわば〈大地の骨格〉のような風景を描くことが多かったのですが、近年は空や雲といった〈形になりきらない風景〉にも惹かれるようになりました。きっかけは、息子が空を見上げて「あの雲、龍みたいだね」と呟いた一言でした。その言葉が心に残り、それ以来森羅万象に姿を変える雲や一瞬現れる情景が、自然に宿る神々の「化身」のように感じられることがあります。
今回の個展ではその「化身」をテーマに、私が風景の中で見たもの、感じたものをかたちにしました。ご高覧賜りますと幸いです。
松下 雅寿

「雪煙龍」10F

「黒龍雲 華厳」10P

「昇龍雲」20P
略歴
- 1978年
- 宮城県に生まれる
- 2005年
- 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
卒業制作 取手市長賞 取手市買上げ
- 2006年
- 財団法人 守谷育英会 修学奨励特別賞
- 2007年
- 第62回春の院展 入選(~’10、’12~’25)
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画修了
修了制作模写 東京藝術大学買上げ
再興第92回院展 入選(~’25)
永井健志・松下雅寿 二人展(紫鴻画廊)(’08、’12)
- 2008年
- 第18期佐藤国際文化育英財団奨学生(佐藤美術館)
「国宝・源氏物語絵巻」模写事業参加(五島美術館)
- 2009年
- 個展「レスポワール展」(銀座スルガ台画廊)
東京藝術大学博士審査展(東京藝術大学大学美術館)
- 2010年
- 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画修了
博士号(美術)取得 博士論文「〈引き立てる・主になる〉黒 水の風景画」
「〈引き立てる・主になる〉黒 水の風景画 松下雅寿日本画展」(松坂屋名古屋店、上野店)
参研展(松坂屋名古屋店、上野店)(~’11)
- 2011年
- 夏の芸術祭―次代を担う若手作家作品展(日本橋三越本店)
東日本大震災復興 チャリティー・オークション 今日の美術展(東京美術倶楽部)
東美アートフェア(丸栄堂)
絹に描く展(東京藝術大学大学美術館陳列館)
絹に描く展(東京藝術大学大学美術館陳列館)
「国宝・伴大納言絵巻」模写事業参加(出光美術館)
- 2012年
- 第二回 大濱紙の力、絵の力 燦々会日本画展(~’17)
日中国交正常化40周年記念 日中美術展 東洋美術の未来を探る―日本画と工筆画(東京美術倶楽部)
燦の会(松坂屋名古屋店、上野店)(~’14)
- 2013年
- ―日本画―列展(松坂屋名古屋店、上野店)(’15、’17)
第2回 郷さくら美術館 桜花賞展(郷さくら美術館 東京)
- 2016年
- 創と造 2016(東京美術倶楽部、京都美術倶楽部、金沢美術倶楽部、大阪美術倶楽部、名古屋美術倶楽部)(~’19)
五輪の年には文化省 アーティストによる新作展(東京美術倶楽部、新国立劇場)
- 2017年
- 東京藝術大学130周年記念 燦の会選抜展(松坂屋上野店、大丸心斎橋店、松坂屋名古屋店)
東京藝術大学130周年記念スペシャルプログラム「東京藝術大学若手芸術家支援基金」チャリティー・オークション(東京美術倶楽部)
- 2018年
- 土佐の紙に描く 晴々会日本画新作展2018(~’25)
- 2020年
- ―仰煌― 松下雅寿 日本画展(松坂屋名古屋店、大丸神戸店)
- 2022年
- 神韻 永井健志・松下雅寿 二人展(大丸京都店)
- 2025年
- 年京葉銀行カレンダー挿画発表~松下雅寿 日本画展(船橋東武)
―化身― 松下雅寿 日本画展(松坂屋名古屋店、大丸京都店)
- 現在
- 日本美術院 院友
- 師
- 手塚雄二
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