インタビュー
2017.12.27
− 特集 − 作家は語る 洋画家 大宮達男
色づかいは僕の命、だから絵の具と格闘する
[─色のすがた─ 第17回 大宮達男 油彩展
2018年1月2日(火)→9日(火)開催]
色の生命力を感じさせる独特の画風で注目される画家・大宮達男先生。日常生活では、ギターを爪弾き、自転車ツーリングを楽しみ、国府宮のはだか祭にも参加するというアクティブな一面も。今回は絵の具の匂いが漂う愛知県内のアトリエにお邪魔して、お話をうかがいました。
「僕ね、あまのじゃくで、ひねくれ者」。そんな自己紹介からスタートした大宮先生のインタビュー。面白い展開になりそうと期待しつつ、先生の画風や人柄、新春に開催される個展「─色のすがた─ 第17回 大宮達男 油彩展」についてお聞きしているうちに、ぶつかり合う相反する感情、またその感情をそのまま表現している先生の画風が浮き彫りになってきました。
きれいに仕上げる絵は好きじゃない、
思わず壊したくなってしまう
― では、まず大胆かつ繊細な色づかいが印象的な画風についてお聞かせください。
「見た目がきれいなものって好きじゃない。女性は別ですよ(笑)。だから、描いて、壊して、組み立てて、もういちど壊す。そうすると色に深みが出てくるんです。僕の中には、大胆な自分と繊細な自分がつねに同居しているけど、ぐちゃぐちゃ迷うのは大嫌い。YES・NOをはっきりさせたい性格」
ご自身の創作活動を「絵の具との格闘」と表現する大宮先生。影響を受けた画家はいるのでしょうか。「芸術家って、好きじゃないなぁ。好きな画家も特定の人はいないし」と、迷いのない言葉がテンポよく繰り出される。自己紹介に偽りはなさそうです。
絵よりも、音楽や本からインスピレーションを受けることが多いかな
― 影響を受けた画家さんがいらっしゃらないということですが、作品の発想はどこから来るのでしょうか?
「絵を描くときは、音楽を聴きながらです。クラシック、ポップス、特に70年代のフォークソングはドンピシャの世代。遠藤賢司、井上陽水、吉田拓郎、なかでも大好きなのは早川義夫。彼の音楽は“魂”、どろっとして重くて、内臓をえぐり取られるような感覚というか、決してきれいな音楽じゃない」
アトリエの壁にはギターが掛けられ、制作の途中に、絵を眺めながらギターをかき鳴らすこともあるそうです。
自転車もまた、趣味のひとつ。体を動かすことが好きとおっしゃるだけあって、最近では、養老山・二ノ瀬峠まで往復3時間かけてツーリングを楽しんだとか。さらに、スポーツジムで汗を流したり、愛犬のボッシュと散歩に出かけたり。けれども、単なる息抜きやストレス解消で終わらないのが大宮先生。
「絵を描いていて、集中力を保てるのは10分程度。描いて、寝転んで、考えて、また描いての繰り返し。それでも描けないときは、ジムで汗を流すんです。若い友だちができるし、彼らを通して視野が広がるし、見えなかったものが見えてきたり、新しい発想が生まれたり。作家どうしで酒を飲んでいるより、いいでしょ(笑)」
ものを作るのが好き。
楽しんで作っていたら、オブジェ展に繋がった
「かわいいでしょう、僕が作ったの」と見せてくださったのは、鉄や陶や木で作られた犬・猫・小鳥たち。アトリエにある木製の椅子も先生の手作りというから驚きです。
― すごくたくさん作品を作られていますね!2012年と2014年には、松坂屋美術画廊でオブジェ作品の大宮個展も開催されていますが、何か気持ちの変化があったのでしょうか?
「実はね、自宅の表札を作るために鉄板を注文したら、たたみ2畳分位の大きな鉄板が届いて。だから、表札を作った残りで5匹の犬のオブジェを作ってみたわけ。それを庭に置いておいたら、アトリエに遊びに来る人たちが気に入ってくれて、楽しくなって次々と100個位作ってしまった」
描いたり消したり探ったりが楽しい。
「絵をいたぶる快感」というのかな
―創作活動を心から楽しんでいらっしゃるよう見えます!
「絵って自己満足だと思う。自分が楽しいか、ワクワクできるかが大事。僕は、足したり引いたり、削ったりして、絵をいたぶるのが楽しい。そうする中で『これだっ』という瞬間があって、その瞬間が繰り返されて、自分の絵になっていくんです」
「でも、それで完成ではなく、額に入れてから最後の仕上げをします。額縁を含めた画面のバランスを、天秤を使って見直すんです。皆さんも試しに、絵の中心で指を立てて、左右のバランスを見てみてください。心地いい絵、落ち着く絵って、かならずバランスが素晴らしいんです」
― 今後さらにやってみたいことはありますか?
「今すぐじゃなく、もっと年齢を重ねて、『渋い作品』を描いてみたいですね。今は色をたくさん使った絵を描いているけれど、いつか、色を抑えることが自然にできるような年齢がくると思う。まだ漠然と、ですけどね」
― 貴重なお話をたくさんありがとうございました。最後に、新春1月2日(火)から開催される個展についてお聞かせください。
「赤や青や黄、色づかいは僕の命です。筆とペインティングナイフでは、同じ色でも表情が違うし、タッチによっても方向が変わってくる。勢いだけでなく、色へのこだわりと色の表情をより深く意識したのが今回の個展。『色のすがた』というタイトルを付けました」
1月2日(火)~9日(火)は先生が会場に顔を出されるので、ぜひ各作品について直接先生からお話を伺ってみたいですね!
美術画廊牛田スタッフから──
大宮先生の作品は色彩、構成を含めて物語の一場面のような叙情性、幻想性に満ちています。大胆でありながら心地よく、センスの良さも感じさせるのは、先生の画力と洗練された感覚の賜物といえます。
大宮先生の個展は松坂屋名古屋店のみで2年ごとに開催されています。先生はご購入くださったお客様のお顔と作品をすべて把握され、前回とは異なる雰囲気の新しい作品が、それぞれのお客様のお宅に飾られ喜んでいらっしゃる姿をイメージしながら、それを喜びと感じながら制作されています。
また、作品に付けられる額縁が常に同じものであるということも大切な要素です。たとえモチーフが変わっても、お客様にとっては作品が掛けられている場面をイメージしやすいという効果があります。そうした先生の制作姿勢や心づかいは、今回で17回目という個展回数にも繋がっていると思われます。
私たちはお客様と作家をつなぐメッセンジャーです。双方の満足度を高める一助になれる喜びを、大宮先生の個展では強く感じることができます。
大宮 達男 略歴
大宮達男先生の次回の個展
─色のすがた─ 第17回 大宮達男 油彩展
2018年1月2日(火)→9日(火)開催