インタビュー
2018.07.24
− 特集 − 作家の本音座談会 佐久間友香/長尾美輝
若手にチャンスを 若手作家が「作家」になるために
[art art art 2018
2018年8月8日(水)→13日(月)開催
松坂屋名古屋店 南館1階 オルガン広場]
今回で第4回目となる若手アーティスト作品を集めた展示即売会『art art art 2018』が2018年8月8日(水)から開催されます。そこで、出品するアーティストをお招きして座談会を実施しました。
繊細なタッチで描く幻想的な少女が人気で、海外での個展経験もある佐久間友香さんと、数々の展示会へ裸婦の作品なども出品している大学院生の長尾美輝さん。二人は愛知県立芸術大学の日本画専攻で、美人画を描いているという共通点をお持ちです。
司会には、『art art art』を企画した八犬堂の大久保さんをお迎えして、作品と作家活動、そして中部地方と美人画の関係についてもお話していただきました。
二人の美人画家が描きたいもの
大久保 共通点の多い二人だけど、佐久間さんが他の美人画家とちょっと違うなと思う部分は、日本画にサブカルチャーの影響を落とし込んでいるところだと僕は感じました。良くも悪くも日本画特有の美人画の野暮ったさがあまりない。何かこだわりがあるのかな?
佐久間 絵に関しては、線にこだわって制作しています。線を一番見せられるのが日本画だと思いますし、紙に対して線を引いてる感覚もすごく好きです。あと、絵を使って世の中と関わっていきたい。それが絵を描いている一番の動機なんです。だから「日本画家」とか肩書にはこだわっていなくて、なるべく幅広い世代の方に見ていただけるような作品にしたいと思って描いています。
大久保 確かに、佐久間さんの作品を展示会で出品させてもらってると、SNSを通じて若い人が結構見に来るね。長尾さんは、ほぼ裸婦を描いているみたいだけど、それって結構めずらしくて、特に若い作家さんではそんなにいないと思う。なんでまた裸婦を描いているの?
長尾 服いらないなって。
大久保 えっ!?そういう理由なんだ(笑)。
長尾 布のシワに興味があったら服を描くと思うんですけど、布のシワには興味がなかったので。好きな色で、自分好みの女の子を描いています。女の子でも、胴体の部分だけが好きなんです。だから最近どんどん下を描こうって思っています。
佐久間 顔じゃないんだ〜(驚)。
大久保 モデルはいるの?
長尾 モデルをお願いしたことも一時期ありましたが、最近は自分をモデルにしています。なるべく似ないように気をつけながら、パーツのデッサンだけ。
佐久間 私は、インスタやツイッターとかで美少女を閲覧しています。スマホにおびただしい数の美少女が保存されていて、そこから好きな目や鼻とかパーツだけ集めて、コラージュして描いているんです。
大久保 おもしろいな〜聞いてみるもんですね。
中部地方で人物画の土壌をつくっていく
大久保 2015年、第1回目の『art art art』では、佐久間さんをはじめ、関東圏で非常に人気のある美人画家の作品をかなり出品しました。なのに人物画が全然売れなかった!そしたらある作家さんから「名古屋には人物画の土壌がない」と聞いて、非常に驚いたんです。佐久間さんもそれは感じてきたことですか?
佐久間 そうですね。名古屋で発表ってなると百貨店がメインになってくるんですが、若手を展示する機会自体が少ない。その中で知名度のない人物作家ってなると、本当に機会には恵まれないなと感じました。
大久保 これはもう作品を目にする頻度の問題だと思うんですよ。東京でも15年くらい前は、百貨店では人物画は売れないから持ってこないでくれって言われてた。でも、その状況が2010年くらいからだんだん変わってきて、今や美人画はひとつの人気ジャンルになりましたから。中部地方にも人物画が好きな方は絶対にいらっしゃるんで、頑張って展示を続けていきたいですね。
佐久間・長尾 頑張ります。
若手作家が「作家」になるために
大久保 愛知県立芸術大学は、卒業修了制作展の会期中にギャラリーとの交流会みたいなものを設けてるんでしょ?
佐久間 そうです。私が大学4年生のときに学長になられた松村先生が、美大を卒業した生徒の支援を大学側があまりできていないことを気にされていて。それで、生徒に作品を売ることの大切さを知ってもらって、そのための活動ができるようにと。
大久保 すごく素晴らしい。関東のギャラリーとかにも来て欲しいよね。実際に、その交流会で長尾さんが僕に話しかけてきたのがきっかけで、展示にもつながっていますし。
長尾 そうでしたよね。
大久保 では、二人は今後どんな活動をしていこうと考えていますか?
佐久間 7月25日から、松坂屋名古屋店でルーキー展もあります。他にも新しい企画とかに参加して、いろいろな人に見ていただける場所を自分でつくっていきたいです。例えば本の装丁であったり、ポスター、CMとかそういう場所でも発表できるように頑張っていきたいと思っています。
長尾 大学を卒業した後も絵を描き続けたいので、たくさん作品を発表していって、今はできるだけ世の中の人に私の名前を知ってもらえるように活動したいです。
大久保 本の装丁はとても有効な広告の手段でもあるし、今はSNSを使って自分の作品をアピールすることもできますからね。今回の『art art art』もきっかけにしてもらって、どんどん若い作家さんが作家という職業に就けるようになっていってほしいです。
名古屋では貴重な、若手アーティスト作品の展示即売会『art art art』。未来を担う作品の数々を見にいらしてください。
プロフィール
佐久間 友香 Yuka Sakuma
長尾 美輝 Miki Nagao