インタビュー
2018.01.29
− 特集 – 作家の本音座談会 徐凡軒/飯沼由貴/高津ゆい
自分らしさを求めて 若き表現者たちがたどり着いた「今」
[ニュースター アートコレクション
2018年2月16日(金)→18日(日)開催
松坂屋名古屋店 南館8階 マツザカヤホール]
新進気鋭な作家の合同作品展「ニュースター アートコレクション」が2018年2月16日(金)から開催。そこで、今勢いのある若手作家にお話を伺うために座談会を実施しました。
今回お集まりいただいたのは、動物を力強く表現する画風で精力的に作家活動を行っている大学院生の高津ゆいさん、「アートフェア東京」にも参加し可愛らしい動物の絵が特徴の飯沼由貴さん、そして山水など風景を描いた作品で国内外問わず個展を行っている台湾出身の徐凡軒さん。
司会に次世代アーティストの発掘・支援をしている八犬堂の大久保さんを迎え、中部に拠点を置いて模索を続ける若き3人の作風と今後についてお聞きしました。
力強さ、愛らしさ、純粋さ それぞれがたどり着いた表現
大久保 見事に三者三様の作風だよね。高津さんはなぜデザイン科を選んで、それは今どう影響してるのかな。
高津 自分の可能性を探すためにデザイン科を選びました。実際にいろいろな領域を試して、自分に合ってること、合ってないことを知る事ができたので、今好きな絵を描くことに集中できていると思います。
動物の生命力や力強さを描きたいというテーマはずっと変わっていません。例えば、鳥が表情も感情も豊かだということを伝えたい。私が描きたいのは「鳥」ではなくて、その鳥の「個性」で、どう描くかは最近やっと固まってきた感じです。
大久保 展示活動も頑張っていて、伊勢現代美術館で個展をやったんだよね。
高津 はい。伊勢現代美術館が小さな入り江にあったので、その環境と自分のテーマを掛け合わせた作品を展示しました。「生命の入江」という個展のテーマをその場で感じてもらえるように、空間づくりから意識しました。
大久保 飯沼さんの絵は色使いがシックだったり、ただのかわいい絵じゃないなって思わせるようなギャップがあるよね。
飯沼 最初は動物が好きだからという理由で、なんとなく1匹を描いていたんです。ある時、牧場で羊がいる柵の中に入ったら、羊から一斉に見られてその迫力に圧倒されました。「こわい」という感情を自分の中で消化する為に群れの姿を描きはじめたんですが、それが自分のやりたかったことと近くて。そのままでは生々しくて描けない「人の感情」を、動物というフィルターを通して表現しているんです。
大久保 徐さんは正統な日本画を描いてると僕は思うんだけど、「日本画家」という一言では言い表せない気がする。
徐 僕はもともと中国画を描いていたから、日本画と中国画を混ぜ合わせて空気感のようなものをつくりたかった。個展も開催する1,2年前からテーマを絞って、どんな場にしたいか、何を表現したいか、全体を考えてつくります。
「純化」が自分のテーマ。単純というより純粋という意味での「純」です。最初は普通の風景を描いていたけど、十何年前の作品から風景や色をどう削っていくかを試行錯誤して今のような絵になっています。
一番大切にしたのは 作品と向き合うこと
大久保 高津さんはまだ学生だけど、皆さん愛知県立芸術大学で勉強していたんだよね。そこを選んだ理由は?
徐 キャンパスを見て、都心部から離れていて制作に専念できるところだなと思いました。
飯沼 そう、世間から隔離されている感じがあって制作に没頭できる場所。
大久保 飯沼さんは没頭しすぎて、単位ひとつ取り忘れて大変だったんだよね(笑)。
高津さんは関東へ行くという選択肢はなかった?
高津 展示の機会や有名な作品に触れる機会は関東の方が多いので、行きたい気持ちはあります。でも自分には、集中して自分の作品と向き合えるここ(中部)が合っている気がして。
大久保 ちなみに徐さんは今後も日本で活動を?
今、台湾のアートフェアは人気で、日本からも参加したいってギャラリーが多いくらいだけど。
徐 確かに台湾は10年くらい前からアートフェアなど、盛り上がっています。でも僕は自分の展示がある時くらいしか帰らないです。
実は台湾から学校の先生のオファーがあって、向こうで先生になろうか迷ったこともありました。だけど、作家として日本で挑戦していたいという気持ちの方が強かったから。
大久保 最後に、これからの目標と今度松坂屋さんで行われる「ニュースター アートコレクション」に対する意気込みを聞かせてください。
徐 拠点は中部のままで、もっと大きな舞台へ上がれるように東京や香港など幅広く展示をしていきたいです。
去年と今年名古屋で小さい個展をやりましたが、松坂屋さんではもっと多くの人に見てもらえることになるので、チャンスだと思って頑張ります。
飯沼 まだ描いたことのない生き物や想い、そういったもののイメージを自分の中で膨らませて描いていきたいです。
名古屋で展示する機会はあまりないので、貴重なこの機会にクオリティーの高い、良い作品を発表したいです。
高津 先輩たちみたいに、大きな舞台に毎年立てるようになりたいです。あとは、たくさんの人に作品を見てもらえるように発表方法も工夫していきたいです。
愛知県芸で計6年間ずっと動物を描いてきました。自分が描きたいものをさらに追求して、次のステップへいけたらと思っています。
悩みながらも自分自身の表現を求めて、作品と向き合い続けてきた3人。目標へ向かって躍進していく、それぞれの「今」の作品に触れてみてください。
プロフィール
高津ゆい Yui Takatsu
飯沼由貴 Yuki Iinuma
徐 凡軒 Fan-Hsuan HSU
ニュースター アートコレクション
2018年2月16日(金)→18日(日)開催
松坂屋名古屋店 南館8階 マツザカヤホール