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インタビュー

2019.02.28


− 特集 − 作家は語る 陶芸家 五代中村道年


気楽に一服 お茶は楽しむもの

[五代 中村道年展 
2019年3月13日(水)→19日(火)開催 
松坂屋名古屋店本館8階美術画廊
 10時→19時30分 最終日は16時閉廊]

名古屋の昭和区八事にある「八事窯」は1923年に開窯しました。千利休によって見出された国焼きである「楽焼」を専門に扱い、長きに渡り日本のお茶文化を支えています。その歴史と技術を受け継いでいる五代中村道年先生の個展が3月13日(水)から開催。インタビューでは楽焼についてや先生ご自身のこと、そしてお茶を楽しむということの大切さをお聞きすることができました。

名古屋の楽焼「八事窯」

―まず、楽焼の特徴を教えてください。

楽焼はすべて「手びねり」。ろくろを使わず手でカタチを起こしていった物をカンナで成形するつくり方です。削り出してつくっていくところは陶芸の中でも陶彫に近いかもしれません。ろくろでつくった物とは違い、ヘラ目が出たり、ぽてっとしたやわらかさが出るのでぬくもりを感じられると思います。

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―楽焼と製法の違う唐津焼の中里重利先生に師事していましたよね。

同じ土物ということで、物をつくる姿勢など見習うべきところは多々ありましたよ。その中でも「物は手でつくるんじゃなくて目でつくる」という教えは印象的でした。手はあくまで道具の一部で、歪みや狂いは目で見て修正しなきゃいけない。だから、物を見る目がなければ良い物はつくれないということです。

―楽焼には代表的なもので「黒楽」と「赤楽」がありますが、八事窯では別々の窯で焼いているんですね。

同じ窯で焼くところもありますが、うちは窯を分けています。黒の窯は木炭を使い、赤の窯は薪を使って温度を上げます。黒はひとつずつ焼くんですが、窯をあたためるための空焚きに、まずは炭が一俵必要なんですよ。赤は黒より温度は低いですが、火力の強い雌松(赤松)を自分たちで薪割りして使っています。

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―赤窯の一度に焼ける数は五碗ほど。屋根は取れるようになっており、焼くときには火柱が上がる。

―温度は火の色で判断するんですか。

そうです、釉薬が化学反応を起こして火の色が変わります。熱い窯の中から作品を取り出すための火箸は、扱う人の身長やつくった時期によって長さと先のカタチがマチマチです。なので、印が釉薬で見えなくなったときは、この火箸を当てるんですよ。そうすると、挟んだ痕で何代目の作品かがわかる。黒の釉薬で挟んだ痕がついているのは傷ではなく、ちゃんと引き出していますって証拠なんです。

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―歴代の火箸が並ぶ。

僕は中村道年という歯車の一部にすぎない。

―時代が変わり、消えてしまう窯もある中で五代続いているのはすごいことだと思います。

自分は「中村道年」の歯車の一部で、いかに良い状態で次へ渡していけるかを考えるだけです。でも、ずっと同じことをやっていてもいけないと思います。今は絶えてしまった焼き物「木具写し」をつくったのも、名古屋の伝統的な技法が使われている物を自分の代で復刻していければいいなという想いからです。

ただ自分の根底にあるのは、多くの人に使っていただけるように「道年の茶碗は使いやすいよね」と言ってもらえる物をつくるということ。鑑賞陶器ではなく、“用”のうつわですから使う人の身になってつくっています。

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―「中村道年」の名を継ぐことにプレッシャーなどはなかったんですか。

プレッシャー以前に、やらざるを得ない状況でしたから。僕、実は家具職人になりたかったんですよ。猫脚とかの家具が大好きで、インテリアに興味があった。だから父が長生きして、「違うことをやっておいで」って言ってもらえていたら今頃は家具をつくっていたかもしれないです。

まぁ、最後に決めるのは自分ですからね。父に上手にこの世界に導かれたんだろうと思います。あまりうるさく言う人じゃなかった。だけど、自身最後の二窯ほどは人が変わったみたいに厳しかったことを覚えています。この八事窯の次代を担ってもらうというのは責任があることなんですよね。自分が息子に教える側になった今なら、あのときの父親の心情がわかる気がします。

お金では買えない「歴史」に目を向けてほしい。

―昔ここは数寄者から支持される文化サロンだったとお聞きしました。

京都にあった光悦村という芸術村のようなものを名古屋でもやろうということから、八事窯は生まれました。焼き物は初代の道年、絵は日本画の森村宜稲さんを呼ぼうなど、芸術家を集めて政界や財界の社交場がつくられた。有名な方だとバーナード・リーチさんや森川如春庵さん、北大路魯山人さんなどが来ています。昔は趣味としてお茶をやっている人が多かったから芸術家同士も接点がありました。

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―黒茶碗 而妙斎宗匠御書付「翠松」

―今はお茶をやる人が少なくなってきましたよね。

お茶っていうのは、茶碗だけでなく床の間を見れば絵や書が飾られていたり、日本の文化が凝縮されていると思います。今の若い人たちにも日本の文化的なものにもうちょっと目を向けてほしいです。正座が痛いなら最初のうちは足を投げ出してもいいと思います。まずは、お茶を楽しむということを体験してもらいたい。うちの窯へつくりに来てもらってもいいし、お茶を飲みにきてもらってもいいですよ。

今回の展示について

お抹茶の茶碗にとらわれずに、うつわを多く出品します。楽焼でつくるうつわは懐石のときに使う向付などが多いんですが、今回は大きなまな板のような、ちょっと変わったお皿を出したりもしようかなと考えています。土物でいただくごはんは本当においしいんですよ。他にも行灯など、生活に取り込めて身近に使ってもらえる物もあるので幅広く楽しんでもらえると思います。気楽に来てほしいですね。

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―右は五代目と並ぶ四代目。お茶を愛するおふたり。

今回の個展で発表された作品は4月にお納めできます。ぜひ、道年先生の茶碗で平成最後の一服をお楽しみください。

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