Vol.36 四季の美─冬の模様
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松坂屋 史料室 企画展 Vol.36古来日本の人々は、四季折々の自然と、その中で育まれた細やかな感性により、季節を感じる風物詩、花鳥などの動植物、自然風景などといった、世界でも稀な、豊かな模様世界を創り上げてきました。今回は「四季の美」シリーズの第4回展として冬をあらわす模様の小袖、裂を紹介いたします。正月二日の夜、枕の下に敷いて寝ると吉夢を見ると言われている『宝船』、「難を転ずる」に通じることから縁起の良い木として親しまれ、寒中にたくさん赤い実をつける『南天』、雪を積もらせた『雪持ち竹』、『雪持ち柳』など冬の風景等が、刺繍や白上げ、友禅染などにより表情豊かに表されています。併せて、その模様や技法、配色などを記した江戸時代のいわゆる「小袖の見本帳」である雛形本も展観いたします。会期 : 平成30年12月1日(土)→平成31年2月26日(火) 休館日 : 1月21日(月)会場 : 松坂屋名古屋店 南館7階・松坂屋史料室四季の美─冬の模様平成30年12月1日(土)→平成31年1月20日(日)/    平成31年1月22日(火)→2月26日(火)松坂屋コレクション衣 裳前期展示前期展示後期展示たからぶね も よう こ そでちり めん じ紅色の縮緬地に、宝船模様が描かれた小袖。腰から肩にかけては、打てば宝が出る「打出の小槌」、金を量る「分銅」、災難から身を守る「隠れ蓑」「隠れ笠」、宝物を入れる「巾着」などの宝尽しと、松、橘の折枝を散らし、裾から腰にかけては宝を積んだ宝船が、友禅染、色糸・金糸の刺繍などで表されています。宝船が描かれた図を正月二日の夜、枕の下に敷いて寝ると吉夢を見ると言われています。(冬模様=宝船)宝船模様小袖 (江戸中期) う こん いろたちばな   みの かさ も よう鬱金色の綸子地に、橘と蓑笠、宝尽し模様が描かれた小袖。紅・藍の型鹿子や刺繍の技法を用い、橘の木には実とともに蓑と笠とが散らされ、蓑には小さく「小槌」「巾着」「分銅」など宝尽しによる吉祥模様が刺繍で表されています。身に着ければ姿を隠すことのできる「隠れ蓑」と「隠れ笠」は厄よけを、橘は長寿を招く象徴といわれています。(冬模様=宝尽し)※型鹿子とは、型紙により鹿子絞りのような模様を付ける技法。りんずじかた かの こ橘に簑笠模様小袖 (江戸前期~中期)ゆき も    なん てん  にわとり も よう こ そでちりめん じ紫色の縮緬地に右裾から両袖に向かって南天の立木と、裾には鶏たちが、色糸・金糸による細かい刺繍により表された小袖。漢方薬の薬草としても用いられる南天は、「難を転ずる」に通じることから縁起の良い木、幸福を招く木として親しまれてきました。寒中にたくさん赤い実をつけることから、お正月の飾りとして松竹梅と共に用いられます。(冬模様=雪・南天)雪持ち南天に鶏模様小袖 (江戸中期~後期)かすみ まつ かい づ     も よう だんがわり から おり茶・白・浅葱の三色段替りの地に、すやり霞に雪持ちの松、青海波に海松貝を繰り返し織り表しています。唐織は、能装束の中で最も豪華で、縫取り風の多色な紋織物の一種で、主に女役の表衣として使用されます。(冬模様=雪)※能装束とは能を演じるときに演者が身につける装束。染織技法の粋を尽くした豪華で気品の高いものが多い。み る霞に松と貝尽くし模様段替唐織 (江戸中期)入場無料

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