2020 PRESTIGE WATCH FAIR
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時代を牽引するリーダーは、時計   I になった16世紀から変わらない。身を愛する。それは技術革新によって時計が小型化され、携帯できるようにつける時計が描かれた最も古い絵は、1536年から37年にかけて制作されたハンス・ホルバイン作「ヘンリー8世の肖像」である。絶大な権力を誇ったイングランド国王ヘンリー8世は、肖像画を描く際に当時の最先端アイテムであった機械式時計をペンダントのように首から吊↖るして堂々とポーズをとっている。自分の威厳を示す肖像画に登場させたいと考えるほど、時計は特別なモノだったのだ。その考え方は、時代を経た現代でも変わらない。ビジネスやエンタテインメントの世界で実績を残し、勝負に勝ち、確固たる地位を築いてきたグローバルリーダーたちは、講演やインタビューなど、人前に姿を現す際には必ずと言っていいほど時計をつけている。それは現代の時計が、ますます自分のスタイルを表すモノになっているからだ。一時はスーツやネクタイがその役割を果たしていたが、現代のグローバルリーダーは必ずしもスーツ&ネクタイを好むわけではない。ビジネスが大きく変化し、ファッションの記号性が薄れゆく一方で、さり気なく手元に合わせた時計が、実はその人の信念を雄弁に語り、その生き様を表している。〝誠実さ〟を表現できる端正なドレスウォッチを好む人もいれば、逆に創造性やセンスをアピールしたい芸術家肌なら独創的モデルを好む場合もある。趣味を時計でさり気なく表現するのも面白い。そのどれもが〝勝負時計〟なのだ。Text TetsuoShinodaEdit NaokMasuyamai magno/Getty Images腕時計はできる男の証明書。グローバルリーダーが愛する腕時計24絶大な権力を誇ったイングランド国王ヘンリー8世。肖像画は1536年にハンス・ホルバインが描いたもので、当時の最先端アイテムであった機械式時計をペンダントのようにして着飾っている。時計が卓上に置くものから携帯するものへと移り変わった当時の最先端ファッションが見てとれる。Henry VIII ヘンリー8世

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