vol.3

今日という一期一会を大切に
飾るアートに想いを込める

居松篤彦|SHUMOKU CAFÉ オーナー

今回のNAVIGATOR

居松篤彦
SHUMOKU CAFÉ
オーナー

名古屋市東区の文化のみち 橦木館のSHUMOKU CAFÉを運営し、自身が育った地元の街から世界へ通用する現代美術を発信。

居松篤彦

SHUMOKU CAFÉ オーナー

家業が画廊を経営しているため、物心ついた頃には当たり前のようにアートが身近な存在だった居松さん。幼い頃からアートを見ることや売買することについて考え、自ずと本物を見る目、感性が磨かれてきました。日本画から浮世絵、西洋美術まで幅広く取り扱っており、特に現代アートに造詣が深く、グローバルな現代アートの動向をキャッチして新しい価値観を見出しています。
現在は事業を通して、アートに対する社会の関心を高める活動をされている居松さんに、全3回の連載で、アートの楽しさを教えてもらいます。

ゲストやT.P.O.に合わせて絵を掛け替える習慣を

ギャラリーでお客様とお話をしていると、「ウチにはもう絵を飾る壁がないから……」と、絵を買うことをためらう方がいらっしゃいます。でも、そんな理由でせっかく気に入った作品との縁が切れてしまうのはもったいない。連載最終回となる今回は、そんな、アートを飾る場所に悩んだことがある方に読んでほしい、ゲストに合わせたおもてなしのコツをご紹介します。

いつもの空間を特別な空間に

自宅にアートを飾るとき、大半の人が自分の好きな作品を飾ろうと考えると思います。それはもちろん間違っていません。でも、ときにはちょっと視点を変えてみませんか。お客様をお招きする部屋にアートがあるのなら、その人のために作品を掛け替えてみてください。その日のゲストに喜んでもらえそうなアートを飾れば、一緒に過ごす時間が刺激的になったり、反対にくつろぎの空間になったりして特別な思いを共有することができ、かつてない新鮮な体験としてゲストの記憶に刻まれることでしょう。

協力:日本フクラ 名古屋ショールーム

相手に思いを馳せてアートを選ぶ

今回は、実際に同じ部屋、同じ場所でアート作品を入れ替えて撮影してみました。それが空間にどんな変化をもたらすのか、見比べてみてください。

ミニマリストな友人のために

シンプルな暮らしをするミニマリストな友人を迎えるなら、居心地の良さを感じてもらえるよう、モノクロの作品を飾ってミニマルな空間を作ってみましょう。

鈴木広行「Time Layers S6801」
2019年/ミクスドメディア オン キャンヴァス
存在感がありながら他のインテリアとの調和も叶えてくれる

ここで飾った作品は、鈴木広行の「Time Layers S6801」。連載第1回目でも紹介した現代作家のミクスドメディアです。この作品は、キャンヴァスの目ひとつひとつを鉛筆で埋めていく作業を5回ほど繰り返した上から、白い小さな点をリズミカルに描くという、気が遠くなる工程を経て生まれました。モノトーンのインテリアの部屋に飾っても抜群の存在感を放ち、シンプルでシックな空間をつくってくれます。
鈴木広行は、まだコンピュータもない1980年代に、このような緻密な作品を手作業で描きました。
国内ではあまり知られていないのですが、1970年代からヨーロッパで活躍しており、一流の美術館に作品が展示されています。ヨーロッパ的な雰囲気のなかにも日本人らしい感覚を持つ作風が特徴です。

白い点を近くで見ると手作業であることがよくわかる

社会的地位の高い人や外国人ゲストをもてなすなら

社会的地位の高い人や外国人のゲストを自宅に招くなら、ピカソやマティスなど、世界的に名の通った作家の作品を飾ることをおすすめします。

ルーチョ・フォンタナ「Corrente(Rosso)/流れ」 1967年/リトグラフ
鮮やかな色彩が目を引く作品

今回取り上げるのは、フォンタナの「Corrente(Rosso)/流れ」。フォンタナはイタリアを代表する20世紀の芸術家で、彼のような世界的に有名な作家の作品がきっかけで共通の話題が生まれ、場を和ませる効果が期待できます。 フォンタナは、1940年代末から50年代にかけて、イタリア・ミラノから始まった芸術理論である“空間主義”の創始者であり、戦後の現代美術に多大な影響を与えた芸術家で、彼の作品は日本ではなかなか手に入りません。 空間主義とはキャンヴァスに穴を開けたりナイフで切り裂いたりして作家の行為の痕跡を見せる手法です。わざと傷をつけることでキャンヴァスの奥行きに迫り、絵画の二次元性に縛られない、より開かれた表現を追求しました。「絵画」や「彫刻」といった枠組みを突破して、空間とは何かを考察し、科学の発展とともに歩む芸術を唱えました。 この作品は50枚限定の版画ですが、キャンヴァスカットされていて、切り裂かれた中央の穴もフォンタナ自身が開けているので、1点ものともいえます。世界的な作家のエディションものは探してもなかなか手に入らないので、このフォンタナを持っていたら、「よく手に入れたね」と盛り上がりますよ。

キャンヴァスに穴を開け新しい次元に飛び出そうとした作家の想いを感じる

華やかな女性ゲストを想って

女性をお招きするなら、こんな華やかな桜の絵画はいかがでしょうか。パワフルに咲き誇る桜の油絵は、見る側を元気にしてくれそうです。

岸本清子「日本の花シリーズ」1988年/油絵
洋のインテリアに和のテイストが加わって和洋折衷の美しさが際立つ

こちらは、名古屋市出身の岸本清子(さよこ)の油絵「日本の花シリーズ」。地元出身の作家と知ると、親しみやすさも増しますね。大胆にレイアウトされた桜の花は、部屋を思い切り明るくしてくれます。そしてなにより、もしもゲストが華やかなファッションやインテリアがお好きな方なら、こういった、しなやかさと力強さを併せ持つ作品がぴったりだと思います。
岸本清子は、1958年に愛知県立旭丘高校美術科を卒業し、同校の先輩である赤瀬川原平、荒川修作、桑山忠明らと交流し、東京でネオダダに参加して活躍しました。多摩美術大学では日本画を学び、やがて前衛美術シーンで活躍した後、再び日本画的な形式に回帰。1979年、乳がんの発症を機に名古屋に戻り、闘病しながら筆を取り、1988年に50歳の若さで亡くなりました。この作品は、最晩年の1988年に描かれた学術的に珍しい作品です。 岸本清子の作品は、金沢21世紀美術館や名古屋市美術館、宮崎県立美術館などにも所蔵されているほか、2019年には愛知県美術館でもコレクション展が開催され、いまもなお評価が高まっています。

好奇心旺盛な友人を招くなら

柔軟なセンスを持った友人には、平面のアートよりも立体のオブジェが喜ばれそうです。モノトーンのインテリアに眩しいほどカラフルなオブジェが強烈なインパクトを与えています。

花木彰太「border(19-1)」
2019年/MDFパネルにアクリル
絵画とはひと味違う不思議な空間を演出してくれる

今回選んだのは、花木彰太の「border(19-1)」。写真では自然の影で左右の色が違うように見えるかもしれませんが、実は左右に違う色を塗っており、これによってどこに飾っても印象的な陰影が生まれ、ユニークな空間が生まれます。 花木彰太は1988年愛知県生まれ、愛知県芸出身の若手アーティストです。構造物とそこから生まれる光と影を、色面や線など絵画の基本的な要素に還元した作品を発表しています。

左:“border”シリーズは2016年から制作を続けている

“border”シリーズは2016年から制作を続けている

写真好きな人がゲストなら

写真アートは、写真やカメラが好きな方はもちろん、幅広い方に好まれます。また、特にモノクロの写真アートはモダンなインテリアとも相性がよく、洗練された空気が漂います。

加納典明「Still life」1961年/写真
身近な野菜の静物写真も、立派なアートに
下:アップで見るとレタスのみずみずしさを感じる

レタスをモノクロで撮影したこの作品は、加納典明によるもの。加納典明といえばヌード写真が有名ですが、写真家でありながら小説家、映画、音楽など、常にメディアと関わり様々なパフォーマンスを行っている稀有な芸術家です。現在も刺激に満ちた作品を発表し続けています。
これは、いまから60年前、加納典明が高校生の時に撮った作品です。名古屋市立工芸高校に通っていた彼の趣味は静物撮影でした。闇市場で、戦後間もない当時はまだ珍しかったレタスを買って、撮影してプリントしたのがこの1枚で、処女作にあたります。

右:エネルギーに満ちた加納典明の大胆なサイン

エネルギーに満ちた加納典明の大胆なサイン

若い友人と過ごすなら

年下の友人を招く場合は、思い切って自分の好きなアートを飾ってみましょう。もしも相手がその作家を知らなければ、その魅力を語ってみると、意外な話の広がりが生まれるかもしれません。

アルベルト・ジャコメッティ 1960年代/リトグラフ
ポスターを飾ると部屋がモダンな雰囲気に
カラーフレームに入れて、インテリアの差し色としての効果を狙ってみては

今回飾った作品は、1960年代にジャコメッティが個展を開催した際に作ったオリジナルポスター。とても希少性が高い1枚です。ジャコメッティは彫刻家として名が知られていますが、実は絵画や版画の作品も多く残しています。

左:オリジナルポスターの証、ジャコメッティのサイン入り

オリジナルポスターの証、ジャコメッティのサイン入り

大切なアートだからこそ、飾りっぱなしにしない

古い版画や掛け軸が長く状態の良さを保てるのは、飾りっぱなしにせず、ときには保存しながら大事にされていることも理由のひとつです。コレクションとして大切に保管して、ときどき飾り、やがて次の世代に渡す。そうした接し方は、アートを扱う醍醐味ともいえます。日本を代表する美術品である掛け軸や焼き物も、普段はしまっておいて、ときどき取り出して眺めるのが楽しみですよね。それはどんなアート作品でも同じ。飾りっぱなしにしないで、季節や趣旨に合わせて入れ替えることが大事なのです。
冒頭で、絵を飾る壁がないというお悩みに触れましたが、持っている絵を全部飾る必要はありません。飾る場所が1箇所でもあるのなら、時と場合に合わせて入れ替えてみましょう。

今回、撮影の場を提供してくださった日本フクラの名古屋ショールームでは、上質な暮らしの空間を提案する家具を多彩に取りそろえています。 ゆたかな経験をもつコーディネートスタッフが、さまざまなご要望にきめ細かくお応えします。

FINANCIER(フィナンシェN264)
片肘ソファ/W1640×D960×H690×SH460mm
税込352,000円~
カウチソファS/W1840×D960×H690×SH460mm
税込335,500円~
アームレスソファ/W1430×D960×H690×SH460mm
税込294,800円~

FINANCIER(フィナンシェN264)
片肘ソファ/W1640×D960×H690×SH460mm
税込352,000円~
カウチソファS/W1840×D960×H690×SH460mm
税込335,500円~
アームレスソファ/W1430×D960×H690×SH460mm
税込294,800円~

カウチソファ/50GY、41GY
KASTOR(カストールN528)
W2440×D1830×H640×SH390mm
税込534,600円~

コンソールテーブル
SLT528-140(GY)
W1400×D290×H650mm
税込159,500円
アームレスチェア/10GY
KASTOR・D(カストール・DD528)
W585×D525×H735×SH465mm
税込88,000円~


左:カウチソファ/50GY、41GY
KASTOR(カストールN528)
W2440×D1830×H640×SH390mm
税込534,600円~

右:コンソールテーブル
SLT528-140(GY)
W1400×D290×H650mm
税込159,500円
アームレスチェア/10GY
KASTOR・D(カストール・DD528)
W585×D525×H735×SH465mm
税込88,000円~

※掲載製品の詳細、クッションや小物等については、フクラ名古屋までお問い合わせください
※掲載データは2021年取材時のものです

フクラ名古屋 名古屋市中村区名駅南2-13-4 TEL/052-571-5241 定休日/火曜・水曜  営業時間/10時〜18時

最終回は、自宅に招く相手に思いを馳せてアートでしつらえを整えるおもしろさを通し、一期一会のおもてなしの心に触れました。
アートの世界に「この場合にはこの作品」などといった決まりごとはありませんが、参考にしていただければうれしく思います。

これからアートコレクションを始める方へ
世界で通じるアートを手に入れるのも有意義ですし、これから評価が上がる作品を見極め、育てることも楽しいですよ。優れたアート作品は時間の経過に耐えて残ります。

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SHUMOKU CAFÉ

名古屋市の公共施設「文化のみち橦木館」のなかにあるカフェ。
アート鑑賞しながらお茶をいただくことができ、文化交流の場としても親しまれています。
愛知県名古屋市東区橦木町2丁目18
TEL052-939-2850

居松篤彦 ATSUHIKO SUEMATSU

愛知県名古屋市生まれ。祖父は表具師、父は画廊経営という、芸術に携わる家に生まれる。関⻄⼤学社会学部を卒業後、家業である弥栄画廊にて近代美術全般を扱う。2015年、現代美術を紹介するギャラリーとして、名古屋にSHUMOKU GALLERYを開廊。2018年、同区でSHUMOKU CAFÉの運営をスタート。2019年、東京・日本橋にアートテクノロジーズ株式会社を設⽴。現在に至る。愛知県立芸術大学非常勤講師も務める。