ジュエリー vol.2
大胆な色使いがパワーをくれるカラージェムストーンの世界
岡村佳代|ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
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岡村佳代
|ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
女性たちに機械式時計の魅力を広めた文筆家。世界中のメゾンを訪れるうちにその技術が注ぎ込まれたハイジュエリーの輝きを知り、現在までさまざまな記事を手がけている。
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
鮮やかな色の魔法で、運命に出会う
ジュエリーといえばダイヤモンド!と思いがちですが、昨今ジュエリーを愛する人たちの間では、サファイアやルビーなどをはじめとする「カラージェムストーン」に熱い視線が注がれています。今回は、私たちをジュエリーの深層の世界へと誘う色石の魅力をご紹介します。
ジュエリージャーナリストが選ぶ、注目のカラージェムストーン
色鮮やかなカラージェムストーンの魅力は、なんといっても圧倒的な“運命感”。デザインに合う石を探して作るダイヤモンドジュエリーに対して、カラージェムストーンは宝石一つひとつを見てデザインを決めることも多いもの。そのためカラージェムストーンを使ったジュエリーは、本当に世界に一つしかない石に出会うきっかけをくれる存在なんです!また、それぞれの色彩を生かして大胆に構成されたジュエリーを身に纏うと、自然と自分の芯が強くなっていくような気持ちになるんですよ。
昨今はカラージェムストーン全体がトレンドになっていますが、私はその中でも特に「パライバトルマリン」が気になっています!これは世界三大希少石の一つと言われていて、澄んだネオンブルーがどこまでも透明に光を取り込み、見るものを虜にするカラージェムストーンです。この石が注目されるようになったのは、一昨年、去年と、世界のハイジュエラーがそろってハイジュエリーに取り入れたことがきっかけでした。元々希少性の高い宝石ではあったものの、それを機にさらに価値が上がったようです。
2つ目に気になっているのは「スピネル」。2021年末、誕生石が一気に10個(!)も追加されたことで話題になりましたが、その中でも新たに8月の誕生石となったスピネルは、ラグジュアリーメゾンのジュエリーにも多く取り入れられている宝石。色褪せない輝きと鮮やかな発色で、身に纏うと肌を華やかに演出してくれます。また、カラーバリエーションが豊富なところも大きな魅力!その中でもシャープで神秘的なブラックスピネルは、ブラックダイヤにも匹敵すると言われるほどの輝きを持ち、世界的に安定した人気を誇っています。
そして3つ目は「マラカイト」。パワーストーンとして知られてきたマラカイトですが、近年はパワーストーンというより、そのミステリアスなグリーンの表情が注目され、エレガントな個性を醸し出すカラージェムストーンとして人気を集めています。ラグジュアリーメゾンがアイコニックなジュエリーにマラカイトをあしらうことも増えていますね。
女性たちを夢中にさせる色石ジュエリー
ここからは、鮮やかな色使いで見るものを惹きつけるカラージェムストーンを、メゾンのクリエイティビティに大胆に昇華させた数々の名品をご紹介。宝石の“常識”を塗り替えたメゾンの歴史とともにお伝えします。
色石の魔術師〈ブルガリ〉に魅せられて
1884年にイタリア・ローマで生まれたローマンハイジュエラー〈ブルガリ〉。街のさまざまな情景や、古代から残されたヘリテージにインスパイアされたジュエリーメイキングが随所に光る、唯一無二のメゾンです。そのセンスは「色石の魔術師」とも呼ばれ、これまでのジュエリーの歴史の中で「一番の宝石と言えばダイヤモンド!」とされてきた既成概念を、カラージェムストーンで塗り替えたことでも知られています。〈ブルガリ〉は、まさにカラージェムストーンの価値を高めた立役者なんですね。
メゾンのアイデンティティを形作る卓越した存在
そんなメゾンが「色石の魔術師」として知られるようになった背景には、ジュエリー クリエイション&ジェム バイイング エグゼクティブディレクターであるルチア・シルヴェストリさんの存在があります。彼女はなんと、〈ブルガリ〉のファミリー以外で唯一宝石を買い付ける権限を与えられた人物。実際の作業の中では、自らの足でインドなどの鉱山がある山奥を訪れ、その目で見て選んだカラージェムストーンを並べて、デザインのイメージを膨らませながら作品を作っていくそうで…。その斬新さこそが、大胆なクリエイションの根源になっているのだと感じます。
また、透明感が勝負の宝石にとっては、本来内包物はない方がよいとされていますが、彼女はそれも1つの個性だと言います。ある時には、何十カラットもの大きくて希少な宝石を手に入れたにもかかわらず、「幸せそうに見えない」と言っておもいきりカットしてしまったそう。私だったら、もったいない!なんて思ってしまいそうですが、実際にはカットした途端に石がキラキラ輝き出したんですって。彼女は、原石が最大限に輝く大きさやカットはそれぞれ違うことを本質的に理解していて、希少性を高めるためには必ずしも大きさが必要なわけではないと思っているんです。そうした考えにふれると、メゾンが彼女にカラージェムストーンのクリエイションを託しているという事実にも深く頷けますよね。
〈ブルガリ〉の要注目ジュエリー
そんな、カラージェムストーンへの強いこだわりをもつ〈ブルガリ〉から、私が注目するジュエリーを紹介します。まずは、メゾンの象徴的なコレクションである「ブルガリ・ブルガリ」。ブラックオニキスがシックに手元を引き締めます。ラウンド型のモチーフにシンプルにロゴを配したイタリアンジュエラーらしい大胆なデザインは、一目で〈ブルガリ〉のジュエリーだとわかるのも魅力。
次に、ローマのカラカラ浴場のモザイク画から着想を得て作られた「ディーヴァ ドリーム」コレクション。私の注目する「マラカイト」が使われています。ローマの遺跡が、何千年の時を超えてモダンジュエリーに昇華したロマンあふれる作品です。また、アイコニックすぎないところも大人の女性にはうれしいポイント。綺麗なマラカイトに、グリーン好きの血が騒ぎます!
幸運のシンボルであるスネークヘッドをモチーフにした「セルペンティ」コレクション。こちらもメゾンを代表する不朽のアイコンです!天然石ならではの縞模様が入ったマラカイトと、深いブルーが目を惹くサファイヤの見事な色石使いにときめきます。
今回は、身に纏う者のオーラを大胆に引き出すカラージェムストーンについてご紹介しました。ジュエリー選びをする時には、このようにさまざまなパワーをくれるあなただけの「色石」を探してみてはいかがでしょう?次回は、日本生まれのブランドが世界を牽引し、洗練された輝きが人々に愛されるパールの魅力についてご紹介します。お楽しみに。
次回は3月下旬の更新を予定しています。
岡村佳代 KAYO OKAMURA
東京都出身。大学在学中から『JJ』などで執筆活動を開始。その後フリーランスとなり、『LEON』、『STORY』の創刊に携わり活躍の場を広げ、時計専門のムックの編集・執筆に携わったことをきっかけに時計の魅力に開眼。女性に機械式時計の魅力を啓蒙した第一人者として、バーゼル&ジュネーブの時計フェアの取材歴は女性ジャーナリスト屈指のキャリアを誇る。取材のため、世界中のメゾンを訪れるうちにその技術が注ぎ込まれたハイジュエリーの輝きを知り、現在に至るまでジュエリー分野においてもさまざまな記事を手がけている。
※掲載品は2023年2月28日時点の取り扱い商品・価格です。商品の内容や価格は変更になる場合がございます。
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