ジュエリー vol.3
時代とともに輝きを増すパールジュエリーの魅力
岡村佳代|ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
今回のNAVIGATOR
岡村佳代
|ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
女性たちに機械式時計の魅力を広めた文筆家。世界中のメゾンを訪れるうちにその技術が注ぎ込まれたハイジュエリーの輝きを知り、現在までさまざまな記事を手がけている。
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト
パールの魅力を再発見
ジュエリー&ウォッチジャーナリストの岡村佳代さんがナビゲーターとなり、ジュエリーの魅力を伝える連載3回目は、MIKIMOTOのパールにフォーカスします。気品ある美しさによって愛されているパール。〈ミキモト〉は1893年に世界で初めて養殖真珠に成功し、パールのオリジネーターとして世界中で知られる存在に。ハイクラスでシンプルを極めた王道のパールネックレスに代表される〈ミキモト〉のジュエリーの魅力に迫ります。
世界を魅了する〈ミキモト〉のパール
「ミキモト」──それは日本が世界に誇るハイジュエラーであり、「真珠」の代名詞と言っても過言ではないでしょう。祖母から、或いは母親から譲られたパールのネックレスは〈ミキモト〉という女性も少なくないはず。1893年に創業者の御木本幸吉さんが世界で初めて真珠の養殖を成功させて以来130年以上紡がれている、その歴史と伝統に裏打ちされたパールジュエリーは、圧倒的な美しさと気品を放ちます。
養殖が発明される前は天然のパールしかなく、当時はパールのネックレスとニューヨークの中心部のビルを交換した人がいたほど高価だったのだそう。御木本幸吉さんが養殖に成功したからこそ、今「日本のパール」という誇るべき宝物があるんですね。
2018年に、〈ミキモト〉はフランスのオートクチュール・プレタポルテ連合協会「Fédération de la HauteCouture et de laMode」のHaute Joaillerie(宝飾部門)に加盟しています。同年よりパリ・オートクチュール・コレクションにおいて、新作ハイジュエリーコレクションを発表。世界に認められたハイジュエラーであることがわかります。
〈ミキモト〉は1986年より、フランス・パリのヴァンドーム広場に出店しています。ヴァンドーム広場に舞うバラからインスピレーションを得た「レ ペタル プラス ヴァンドーム」というコレクションもあり、とってもかわいらしいんです。フランス人がパールに憧れてお店を訪れ、時間をかけてジュエリーを選ぶ姿を見ると、誇らしい気持ちになります。やっぱりパールは〈ミキモト〉!日本のパールは綺麗!と話しているのを見ると、嬉しいですね。
見る人の心を惹きつける、魔法のような光沢
パールとひとことで言っても、さまざまな種類があり、選りすぐりのパールを使用している〈ミキモト〉。おびただしい数のなかから、全体の1割にも満たないほどの厳格な基準を設けることで、世界でもトップクラスの高いクオリティを誇っています。私が〈ミキモト〉のパールジュエリーを手に取るたびに感動するのが、その光沢!美しい魔法のような輝きは、見る人を強く惹きつけます。ただその分、高価であることも事実。しかし私は、その価格はまったくもって妥当なものだと思いますし、それだけの確かな価値があると確信を持って言い切れます。余談ですが、私がよくお仕事でご一緒させていただいている大御所のスタイリストさんたちの多くも〈ミキモト〉の大ファン!目の肥えた、そしてお洒落の年輪を重ねてきた女性たちの心も惹きつけて離しません。
マリリン・モンローとジョー・ディマジオがハネムーンで来日した折に、ディマジオからモンローに贈られたのも〈ミキモト〉のネックレス。やはり、女性を綺麗に見せるためのアイテムとしてやっぱりパールって最強なんですね。
真のラグジュアリーを体現するサステナブルな取り組みも
SDGsがトレンドでもある現在、サステナブルな取り組みをしているラグジュアリーメゾンが増えてきています。〈ミキモト〉は早くから取り組んでいて、2004年には九州大学、㈱東京測器研究所とともに世界初の二枚貝を用いた水質環境監視システム「貝リンガル」を共同開発しています。また、真珠の収穫の後に排出される貝肉の一部を原料として再利用する取り組みも行っていて、自然界への産業廃棄物をゼロにする「ゼロ・エミッション」も実現。真珠を育む美しい海を守るための研究を行っているほか、海洋に関する研究に取り組む研究者たちのサポートにも積極的で、企業として真剣に地球の美しい未来を考えているんだなと感じます。そんな姿勢は私たちに「真のラグジュアリーとは何か」を教えてくれているのではないでしょうか。
新しいスタイルを提案するパールジュエリー
ラグジュアリーな印象のパールジュエリーですが、最近では日常的に楽しむ方が増えています。〈ミキモト〉はパールオリジネーター・リーディングカンパニーとして、パールジュエリーの多様性やジェンダーレスアイテムであることを世界に発信。年齢・性別問わず自由に楽しめるジュエリーを発表し続けています。〈ミキモト〉のWEBページ「LOOK BOOK of 6 women」では、パールをデイリーに自分らしく楽しめる提案がたくさん。パールはこんな合わせ方もあるんだ!とわくわくするようなスタイリングを見つけることができますよ。
カジュアル&ジェンダーレスに楽しむ
私はもともと「パールこそ普段からつけるのがかっこいい!」と思っていたので、10代後半から白シャツやTシャツにデニムパンツ、というようなカジュアルなコーディネートに積極的に取り入れてきました。なので、今こうして、タイムレスにつけられる自由でモダンなパールジュエリーが次々に誕生しているのは嬉しい限り!「クラシック」「コンサバティブ」それも紛うことなきパールの魅力の根幹ではありますが、より自分らしくつけこなせるジュエリーに出合うことができる「パールの多様化」はこれからもどんどん進んでいくと思うし、とても楽しみです。昨今、若者を中心に流行っているロゴスウェットのスタイルに、イヤリングなどでパールをさりげなく取り入れるのもおしゃれ。パールはシックな服に合わせがちですが、個人的にはパールこそどんどんbe casual!だと思っています。
また、Z世代を中心に、本当にパールのジェンダーレス化というか、性別に関係なくパールを楽しむ人がどんどん増えていますね。〈ミキモト〉が2021年に菅田将暉さんを起用したグローバルキャンペーンを展開したときは、ある意味センセーショナルで話題を呼びましたが、それから1年ちょっとの間で、ますますジェンダーレスにパールを楽しむというモードが醸成されていると感じます。昔は、パールは女を美しく見せるもの!と思っていたんですが、今はジェンダーの垣根がなくなって、既成概念が変わってきました。パールの楽しみ方も広がったのではないでしょうか。
パールの可能性を追求する〈ミキモト〉の新作コレクション
パールのオリジネーターとして、気品のある美しさをもつハイクラスのパールジュエリーを展開し、時代とともに進化させてきた〈ミキモト〉。そんな、世界中のファンを魅了し続けるブランドの新作ジュエリーにも注目してみましょう。
2023年2月に発売されたばかりの「V Code」コレクションは、力強さを秘めた“V”のフォルムとパールの柔らかな光沢のコントラストが印象的。エッジの効いたデザインで、エイジレスなスタイルが叶えられそうです。
ミキモトの「M」から着想を得た「M Collection」には、ブランドの矜恃である高品質のパールを日常から纏うことができる多彩なジュエリーがそろっているのが魅力。「M」のあしらい方はあくまでもさりげなく、モダンでいながら、「見る人が見たらわかる」というような奥ゆかしさも共存する稀有な存在感を放ちます。
2022年に登場した新作モデルのイヤーカフとリングは、肌なじみのよいイエローゴールドに上品な光沢のパールがあしらわれ、洗練された印象に。
ミキモトのイメージを、いい意味で鮮やかに覆した漆黒のパールジュエリーコレクション「PASSIONOIR」。パールのジェンダーレス化を加速させるクールな表情は、若い世代はもちろん、成熟した大人の装いのスパイスにもぴったり! ファッションのプロからも絶大な人気を集めています。
振り返ってみても「真珠のネックレスといえば冠婚葬祭」というイメージは10代のころからまったくありませんでした。子どもなりに、パールは自由に楽しんでこそ美しいと感じていたからかもしれません。とはいえ、やはりもっと大人にならないと本当に似合わないというのもわかっていて、だからこそ「真珠の似合う女性」に強い憧れを抱き、また、「真珠の似合う女性」は私にとって「素敵な大人の女性」と同義語でした。長じて、果たして「真珠の似合う女性」になれたか自信はありませんが、「パールのジュエリーをしていると綺麗に見える」と褒められることも少なくなく(笑)、パールには女性を美しく見せてくれる魔力があることは確信しています。
パリのヴァンドーム広場を訪れると、私は必ず〈ミキモト〉のブティックに入るんです。いつもいらっしゃる、とても気品あるマダム(ミキモトパリ 支店長)のパールの着けこなしが本当に素敵で!また、買い物をしているフランスの女性たちの高揚感などを目の当たりにすると、パールって本当に国境を超えて人々に輝きを与える特別なジュエリーなんだと痛感します。大いなるポテンシャルを秘めたパール。これまでのコンサバティブなイメージから、自由につけられるジュエリーへの振り幅を、これからも楽しんでいきたいです。
今回は、日本のハイジュエラー〈ミキモト〉のパールにフォーカスし、さまざまな表情をもつパールジュエリーをご紹介しました。シンプルだからこその美しさが光るパールの魅力を感じていただけたでしょうか?次回は、大切なジュエリーを永く愛するために注目したい、ジュエリーリフォームをご紹介します。お楽しみに。
次回は4月下旬の更新を予定しています。
岡村佳代 KAYO OKAMURA
東京都出身。大学在学中から『JJ』などで執筆活動を開始。その後フリーランスとなり、『LEON』、『STORY』の創刊に携わり活躍の場を広げ、時計専門のムックの編集・執筆に携わったことをきっかけに時計の魅力に開眼。女性に機械式時計の魅力を啓蒙した第一人者として、バーゼル&ジュネーブの時計フェアの取材歴は女性ジャーナリスト屈指のキャリアを誇る。取材のため、世界中のメゾンを訪れるうちにその技術が注ぎ込まれたハイジュエリーの輝きを知り、現在に至るまでジュエリー分野においてもさまざまな記事を手がけている。
※掲載品は2023年3月28日時点の取り扱い商品・価格です。商品の内容や価格は変更になる場合がございます。
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※写真はイメージです。撮影用の装飾品は商品に含まれておりません。