ジュエリー vol.4
大切なジュエリーをもっと素敵に。今こそ
試したいジュエリーリフォーム

岡村佳代|ジュエリー&ウォッチジャーナリスト

今回のNAVIGATOR

岡村佳代
ジュエリー&ウォッチジャーナリスト

女性たちに機械式時計の魅力を広めた文筆家。世界中のメゾンを訪れるうちにその技術が注ぎ込まれたハイジュエリーの輝きを知り、現在までさまざまな記事を手がけている。

岡村佳代

ジュエリー&ウォッチジャーナリスト

ジュエリー&ウォッチジャーナリストとして数々の一流メゾンのジュエリーにふれ、自身も数々の名品を所有する岡村佳代さん。全4回の連載を通して、唯一無二の輝きとメゾンの哲学が詰まったジュエリーの魅力と、その楽しみ方についてお話しいただきます。

ジュエリーをさらに素敵にするリフォームの魅力

画像提供:大倉堂

vol.1〜3では、ダイヤモンドやカラージェムストーン、パールの魅力についてお話ししてきました。今回のvol.4では、お持ちのジュエリーをより輝かせることのできるジュエリーリフォームに注目。リフォームのビフォー・アフターもご紹介します。

新しい命を授けることで、石はもっと輝く

ジュエリーというのは「装飾品」ではあるけれど、多くの場合そこに「かけがえのない思い」が宿っている非常にパーソナルなものなのではないでしょうか?祖母や母といった家族から受け継いだもの、パートナーからのプレゼント、あるいは一生懸命頑張った自分へのご褒美──そう、その価値はまさにプライスレスです。とはいえ、今の自分や時代のムードに合わないという理由から、ジュエリーボックスの中で眠らせたままの宝石を、きっといくつかはお持ちですよね。かく言う私も、「処分する気はまったくないけれど、着ける気にもまったくなれない」というジュエリーが少なからずありました(笑)「リフォームしたいな」と思いながら、魅力的なジュエリーに出合うと、つい新しいものに惹かれてしまってリフォームは後回し。そんなことを繰り返してきましたが、実は昨年、初めて、母から譲られたエメラルドのリングをリフォームしました。もともとのデザインのクラシカルさも、一周まわってかわいいようにも感じましたが、やはりもう少しモダンなイメージにして普段使いにしたいなと。

ジュエリーというのは「装飾品」ではあるけれど、多くの場合そこに「かけがえのない思い」が宿っている非常にパーソナルなものなのではないでしょうか?祖母や母といった家族から受け継いだもの、パートナーからのプレゼント、あるいは一生懸命頑張った自分へのご褒美──そう、その価値はまさにプライスレスです。とはいえ、今の自分や時代のムードに合わないという理由から、ジュエリーボックスの中で眠らせたままの宝石を、きっといくつかはお持ちですよね。かく言う私も、「処分する気はまったくないけれど、着ける気にもまったくなれない」というジュエリーが少なからずありました(笑)「リフォームしたいな」と思いながら、魅力的なジュエリーに出合うと、つい新しいものに惹かれてしまってリフォームは後回し。

そんなことを繰り返してきましたが、実は昨年、初めて、母から譲られたエメラルドのリングをリフォームしました。もともとのデザインのクラシカルさも、一周まわってかわいいようにも感じましたが、やはりもう少しモダンなイメージにして普段使いにしたいなと。結果、イメージにかなり近い、シンプルながらも石の輝きがいっそう引き立つリングへと生まれ変わり、他のリングと重ねづけしたりしながら日々楽しんでいます。つくづく感じたのは、ジュエリーリフォームは、石をより輝かせるのと同時に、そこに込められた「かけがえのない」何かに再び命を与え、輝かせるのだということです。以来私は、映画「トイストーリー」のおもちゃのように、宝石箱に眠っているジュエリーたちが夜中に、「私だってまた輝きたいの!」と騒いでいる様子をひとりで想像して(笑)、またひとつずつ新しい命を授けて輝かせたいなと思っています。

結果、イメージにかなり近い、シンプルながらも石の輝きがいっそう引き立つリングへと生まれ変わり、他のリングと重ねづけしたりしながら日々楽しんでいます。つくづく感じたのは、ジュエリーリフォームは、石をより輝かせるのと同時に、そこに込められた「かけがえのない」何かに再び命を与え、輝かせるのだということです。以来私は、映画「トイストーリー」のおもちゃのように、宝石箱に眠っているジュエリーたちが夜中に、「私だってまた輝きたいの!」と騒いでいる様子をひとりで想像して(笑)、またひとつずつ新しい命を授けて輝かせたいなと思っています。

ジュエリーブランドが手掛けるリフォーム

今回は、松坂屋名古屋店 北館GENTA5階 宝石サロンにある2つのジュエリーブランドにおけるリフォームをご紹介します。素敵な事例も伺いましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

伝統の技でジュエリーを生み出す〈HIROUMI〉のリフォーム

〈HIROUMI〉は1930年の創業から世紀を越えて、高度な宝飾技術を継承しながら、真摯にハイジュエリーメイキングを続けているジュエリーブランドです。現在の当主、廣海 貴晴さんは3代目。外部に委託することなく、工房内ですべて製作されているそう。

〈HIROUMI〉の特徴のひとつが、職人や自社デザイナーが手描きでデザイン画を描くこと。作り手がデザインし、それを自らの手で形にしているので、職人の頭の中にあるものをそのまま再現することが叶うのです。また、デザイン画は複数描いて提案してくれるので、より具対的に自分の理想をイメージしやすいのも魅力。ふんわりとした希望しかない場合でも、お手持ちのジュエリーをより魅力的に輝かせるリデザインを豊富な経験から導き出してくれます。
認識しておかなくてはいけないのは、「オーダーには2〜3ヶ月かかる可能性がある」ということです。デザインが決まったら見積もりを作り、材料を手配。そして材料を完璧に用意した上で製作に取りかかられます。たとえば飾りの多い大きなネックレスやティアラなどは製作に1年くらいかかることもあるとか。他社でよく見かけるたくさんある型枠から選んで流し込むといったセミオーダーならば1ヶ月半ほどでできることもありますが、〈HIROUMI〉は完全オーダーメイド。リフォームの場合も、ご希望のデザインが完成度の高いジュエリーになるようにフルオーダーと同じく最適な工法を選んで製作しています。

三代目 廣海 貴晴さん

〈HIROUMI〉の特徴のひとつが、職人や自社デザイナーが手描きでデザイン画を描くこと。作り手がデザインし、それを自らの手で形にしているので、職人の頭の中にあるものをそのまま再現することが叶うのです。また、デザイン画は複数描いて提案してくれるので、より具対的に自分の理想をイメージしやすいのも魅力。ふんわりとした希望しかない場合でも、お手持ちのジュエリーをより魅力的に輝かせるリデザインを豊富な経験から導き出してくれます。

三代目 廣海 貴晴さん

認識しておかなくてはいけないのは、「オーダーには2〜3ヶ月かかる可能性がある」ということです。デザインが決まったら見積もりを作り、材料を手配。そして材料を完璧に用意した上で製作に取りかかられます。たとえば飾りの多い大きなネックレスやティアラなどは製作に1年くらいかかることもあるとか。他社でよく見かけるたくさんある型枠から選んで流し込むといったセミオーダーならば1ヶ月半ほどでできることもありますが、〈HIROUMI〉は完全オーダーメイド。リフォームの場合も、ご希望のデザインが完成度の高いジュエリーになるようにフルオーダーと同じく最適な工法を選んで製作しています。

|事例 1|ダイヤモンドのペンダント

大きなダイヤモンドを持ちこまれたあるお客様のオーダーは、「シンプルで今風なペンダントにしたい」。もともと大事にしていたペンダントだったそうですが、ダイヤモンドのルースが外れてしまったので、それをきっかけにリフォームしようと思いたったそう。当初はもともとのペンダントのように枠にセッティングする予定だったそうですが、〈HIROUMI〉はリデザインを提案。雲のようなイメージで、エメラルドカットの大きなダイヤモンドの周りをさらにダイヤモンドで取り囲み、〈HIROUMI〉が得意とするスカラップ留めに。最初は「少し派手ではないか?」と不安そうだったというお客様も、完成した作品を見て、とても気に入られたということです。

|事例 2|ダイヤモンドのリング

受け継いだヴィンテージスタイルのリングを「普段使いできるようなシンプルなものに作り変えたい」と持ちこまれたお客様。オリジナルのリングも味のあるデザインで長年愛用されているご様子でしたが、背が高く爪も潰れ変形もみられたので、日常使いしやすく爪の引っ掛かりのないベゼルセッティングでシンプルにダイヤモンドの輝きを楽しんでもらえるスリーストーンリングをデザインしました。また、石枠の側面には光を取り込めるようにスリットを入れています。シンプルながらも、透明感ある輝きが主役を演じる美しいダイヤモンドリングに生まれ変わりました。

リングの事例のように、セッティングだけでも大きく印象を変えることができるのがリフォームのすごいところ!「リフォームする」となると、ついドラマティックに変えようとしてしまいがちかもしれませんが、シンプルでもまったく異なる印象へとアップデートさせることができます。〈HIROUMI〉の歴史の中で、一番大きなリフォーム作品はティアラだったとか。オーダー主であるお母様が、「所有するダイヤモンドを使って、嫁ぐ4人の娘がつけるティアラを」というオーダー。デザイン画は2種類。それは最初のデザイン画を描いた後、ティアラの高さをもっと出してダイヤを追加したものを再び提案されたため。理由は、ティアラというジュエリーの特性で、「ある程度髪の毛に埋まってしまい、細かなディティールが見えにくくなってしまうのではないか」と職人が心配したからだそう。結果、お母様の手持ちのジュエリーや宝石も使い、愛猫3匹のモチーフも加えた何世代も受け継がれるようなティアラを作ることができ、それは〈HIROUMI〉の歴史の中でもひと際輝く逸話となりました。

〈HIROUMI〉がジュエリーをリフォームする際に、最も大切にしているのは、「宝石の良さを引き出す」ということ。いうならば、出来合いの枠に半ば強引に、宝石をセッティングしたほうが安く、早く済みますが、「枠」から考えるのではなく、「宝石」から考える。「宝石に合った台座」を作る──それが〈HIROUMI〉のフィロソフィー。思い入れのある宝石を使ってオリジナルの台座なども製作し、新たなジュエリーへと宝石の魅力を開花させるのが、〈HIROUMI〉のリフォームであり、もともとフルオーダーでハイジュエリーを手がけていたジュエラーならではの醍醐味なのです。

和の美しさをもつジュエリーを手掛ける〈大倉堂〉のリフォーム

世界に誇る日本の美意識を映し出した「Made in japan」のジュエリーを、すべて自社工房で一貫製作している〈大倉堂〉。1969年の創業以来、日本製、そして手作業にこだわったハイジュエリーメイキングを行っており、国内屈指の宝飾技術を誇るジュエラーへとステータスを高め現在に至っています。
当然、〈大倉堂〉はジュエリーのリフォームにおいても超一流を追求しています。「今よりさらに素敵なものを作る」というのがジュエリーのリフォームにおける〈大倉堂〉の美学と矜恃。オリジナルより、いかに、もっと綺麗に魅力的に、大事な石をさらに美しく輝かせるか?〈大倉堂〉には、それを実現できるノウハウが確かに存在しています。とはいえ、時には「そのまま使われたほうがいいですよ」という提案をする場合も。〈大倉堂〉では、持ちこまれたジュエリーの状態をしっかりと確認するところからすべての工程がスタートするので、たとえば、爪を外したら宝石に亀裂が入ってしまいそうなセッティングのジュエリーだとしたら、無理にリフォームはせずに。それは、そのジュエリーはオーナーや家族の思い出が詰まったかけがえのないもの、壊れたら取り返しがつかないという、「その石自体の価値以上の尊さ」を十分に理解しているから。

世界に誇る日本の美意識を映し出した「Made in japan」のジュエリーを、すべて自社工房で一貫製作している〈大倉堂〉。1969年の創業以来、日本製、そして手作業にこだわったハイジュエリーメイキングを行っており、国内屈指の宝飾技術を誇るジュエラーへとステータスを高め現在に至っています。

当然、〈大倉堂〉はジュエリーのリフォームにおいても超一流を追求しています。「今よりさらに素敵なものを作る」というのがジュエリーのリフォームにおける〈大倉堂〉の美学と矜恃。オリジナルより、いかに、もっと綺麗に魅力的に、大事な石をさらに美しく輝かせるか?〈大倉堂〉には、それを実現できるノウハウが確かに存在しています。とはいえ、時には「そのまま使われたほうがいいですよ」という提案をする場合も。〈大倉堂〉では、持ちこまれたジュエリーの状態をしっかりと確認するところからすべての工程がスタートするので、たとえば、爪を外したら宝石に亀裂が入ってしまいそうなセッティングのジュエリーだとしたら、無理にリフォームはせずに。それは、そのジュエリーはオーナーや家族の思い出が詰まったかけがえのないもの、壊れたら取り返しがつかないという、「その石自体の価値以上の尊さ」を十分に理解しているから。

そんな〈大倉堂〉を訪れる人たちのジュエリー道は十人十色。母親が自らのジュエリーを娘に似合うようにと持ちこまれるケースはもちろん、バブルの頃に買ったジュエリーを財産として考えてリフォームされる方も少なくないとか!お客様のオーダーはさまざまで、パールとエメラルドを使った大きなジュエリーを所有するお母様が、「均等に娘に分けたい」というオーダーもあったのだそう。一旦、すべてのパールとエメラルドを地金から外し、ペンダントやピアスなどさまざまなジュエリー2つずつにリメイク。お嬢さんたちに対する愛情はふたりとも同じなので、均等に分けることができてとてもご満足されたそうです。
ほかには、「持っているリングを息子のお嫁さんの好みに合わせてつくり変えてプレゼントしたい」「4つのジュエリーに使われている石を全部集めて、ひとつの豪華なジュエリーに」、「妻とペンダントを共用したいので、石の部分が取り外し可能でつけ変えられるような作りに」など、職人の高いクリエイティビティが必要とされるご依頼も。エンゲージリングのダイヤモンドを、もっとシンプルで日常に寄り添うリングやネックレスへとアップデートしたいというオーダーも増えているそう。

リフォームにかかる期間は、1ヶ月半から半年ほどで、製作に必要な工程などによって変わってきます。〈大倉堂〉にリフォームのために持ちこまれるジュエリーは年々増加中。それはただ単に自分のおしゃれのためだけではなく、大切な物、確かな価値が宿るものを次の世代へと引き継いでいくという、SDGs的な考えが浸透しているからなのではないでしょうか。

ジュエリーを美しく保つためのお手入れ

大切なジュエリー、その美しい輝きを長く保つためにはもちろん、例えばネックレスのクラスプなどの消耗品を長持ちさせるためにも、メンテナンスはとても大切です。そこで今回ご紹介した〈HIROUMI〉、〈大倉堂〉に、ジュエリーのメンテナンスについてお話を伺いました。

ともに、お店に持ち込んでのメンテナンスについては、頻度の指標は特にないとのことです。しかしやはり、半年なり1年に1度なり、あるいは数年に1度でも、プロの手に委ねてメンテナンスすることを推奨されています。となると、重要になってくるのが日頃のお手入れ。
「ジュエリーは肌につけるものなので、眼鏡などと同じように考えてほしい」というのは〈HIROUMI〉さん。「ハンドクリームや、ウォータープルーフの化粧品、保湿スプレーなどのコスメは皆さんお使いと思いますが、ジュエリーを身に着けたままコスメ類をつけると隙間に入り込むので注意が必要。カビが生えて色が変わってしまうこともあります。裏の部分など、掃除するとき届かないようなところにこそ汚れが溜まるので、こまめに裏側の掃除をしてほしいですね。軽く拭くだけでもOKです」。また、〈大倉堂〉さんによると「ジュエリーは、出かけるときは最後につける、帰ってきたら最初に外すを徹底していただきたい」とのこと。なぜなら、着替えの際に引っかけたり、化粧水や香水がついたりしてしまうこともあるから。

いずれにせよ、普段からジュエリー用のクロスを使ってこまめに拭くというのが一番大事!時間が経つと汚れが残ってしまうこともあるそう。冠婚葬祭などで帰ってきて疲れて、ついそのまますぐ仕舞ってしまうケースも多そうですが、これは絶対にNG!一晩風に通して、クロスで拭いてからしまうのがベストです。カラージェムストーンでは、エメラルドは繊細な石なので特に注意が必要。他の石とぶつかると割れてしまうこともあるので、保管方法にも注意を払うのが賢明です。

ジュエリーというのは消耗品ではなく、「受け継ぐ」という大きなテーマがあります。装飾品でありながら、「財産」という側面もあります。そのことを考えると、日々、というのは無理にせよ、折に触れ大切にお手入れするのは当然のことですよね。私はジュエリーに関しては信頼できるプロにメンテナンスをお任せしています。HIROUMIさんや大倉堂さんのように技術もセンスもあわせもつジュエラーと信頼関係を構築し、宝石のかかりつけ医のようなお付き合いをしていけたら理想的ですよね。

全4回にわたり、ジュエリーの魅力からお手入れまでご紹介してきました。その美しさに触れて、気持ちが高まったり、心が落ち着いたり。ジュエリーは自分だけのお守りのような存在になりうるアイテムです。ぜひ、さまざまな美しさに出会って、魅せられて、人生をともにするジュエリーを見つけてみてくださいね。

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岡村佳代 KAYO OKAMURA

東京都出身。大学在学中から『JJ』などで執筆活動を開始。その後フリーランスとなり、『LEON』、『STORY』の創刊に携わり活躍の場を広げ、時計専門のムックの編集・執筆に携わったことをきっかけに時計の魅力に開眼。女性に機械式時計の魅力を啓蒙した第一人者として、バーゼル&ジュネーブの時計フェアの取材歴は女性ジャーナリスト屈指のキャリアを誇る。取材のため、世界中のメゾンを訪れるうちにその技術が注ぎ込まれたハイジュエリーの輝きを知り、現在に至るまでジュエリー分野においてもさまざまな記事を手がけている。

※掲載品は2023年4月27日時点の取り扱い商品・価格です。商品の内容や価格は変更になる場合がございます。
※数量に限りがある商品もございますので、品切れの際はご容赦ください。
※予約販売となる商品もございます。
※写真はイメージです。撮影用の装飾品は商品に含まれておりません。