人に、自分に、幸せを呼ぶ
おもてなしレシピ
若林三弥子|料理研究家
今回のNAVIGATOR
若林三弥子
|料理研究家
日本一予約の取れない料理サロンboa mesa 主宰。
画期的野菜調理法「蒸しいため」を発案し、YouTuberとしても活躍中。
料理研究家
今回は全3回の連載で、ニューノーマル時代の若林流おもてなしをレッスンしていただきます。
料理は人を幸せにしてくれます
自宅で過ごす時間の増えたwithコロナ時代は、図らずも、家事能力を磨き、それを楽しめることが、わたしたちに最も必要なスキルであるということを再認識させた局面でもありました。数多い家事の中でも、料理は最もシンプルに、人を、自分を、幸せにできる方法です。
肩肘はらず、でも「昨日よりもう少し美味しいものを作りたい」と願いながらキッチンに立つ。そんな時間は、自然と自分に向き合えるのではないでしょうか?
今回は、手に入りやすい食材を使って、味付けの仕上げや盛り付けをひと工夫した、ヘルシーなメニューをお伝えします。親しい友人をカジュアルなランチにお招きしてみてはいかが?
さっそく、ガラスの器に野菜を取り合わせた前菜2品をお出ししてみましょう。
ヴェリーヌ風ジャーサラダ
「ヴェリーヌ」とは、フランス語の「ヴェール=ガラス」と「テリーヌ」を組み合わせた造語です。テリーヌの切り口を美しく見せるのと同じように、ガラスの器に食材を層にして詰めていく手法ですが、今回は、そのヴェリーヌと、数年前に流行してすっかり市民権を得たジャーサラダを組み合わせてみました。
器に使ったのは食器ではなく、雑貨屋さんで見つけた小ぶりな多用途のガラスジャーで、ドレッサー周りをかわいくお洒落に演出する小物入れとしてディスプレイされていたものです。 これに、ツナサラダ、キャロットラペを詰め、半熟に仕上げたうずら卵とミニトマトを半分にカットして切り口が見えるように貼り付けます。うまくできたら、レッドキドニービーンズを入れて、マイクロハーブをふわっとのせる。そして、オリーブオイルを回しかけてフタをしたら完成です。 見た目がかわいく、味と食感の多層感があり、しかも前日から準備しておけるので、冷蔵庫にスペースさえあればおもてなしにぴったりのおすすめの前菜です。
カリフラワーの蒸しいため〈セゾンファクトリー〉飲む酢カシスのジュレがけ
私が発案した調理法「蒸しいため」をしたカリフラワーにジュレをかけた前菜です。 セゾンファクトリーの飲む酢シリーズは、飲むだけでなく様々なお料理に利用できる優れもの。私の大好きなカシスを〈TOMIZ〉のアガー(海藻由来100%のゲル化材)でゆるゆるとしたジュレにして、蒸しいためしただけのカリフラワーにトッピングしました。
ガラスの小さなカクテルグラスの周りに内側から貼り付けて華やかさを演出しているのは「紅くるり」という赤大根。スライスし塩を振ってしんなりさせたら白バルサミコ酢でマリネしています。
蒸しいためとは
「蒸しいため」とは、若林三弥子先生が考案した画期的野菜調理法です。茹でずに鍋の中で循環する水蒸気のエネルギーを利用して調理をする方法で、登録商標を取得しています。
「蒸しいため」にすると、野菜のうま味・栄養価・風味・滋味を逃さず、食感良く美味しくいただけます。なんでも「蒸しいため」で火を入れてから、そのあとは煮るなり焼くなりお好きなように。たっぷりのお湯を沸かすことも、たっぷりの塩を使うこともなく、野菜ならなんでもこの調理法を適用できます。
カリフラワーやブロッコリーなどのように水溶性のビタミンが豊富な野菜はとりわけこの方法がおすすめです。
ブロッコリー1株を使って、蒸しいための調理法をご紹介します。
鶏むね肉のオクラガランティーヌ
〜〈ファーイーストバザール〉オリジナルのハリッサを添えて
火入れするとかたくなりがちな鶏むね肉ですが、塩麹でマリネしてから低温調理するとしっとりジューシーになります。低温調理器がなくても鋳物ほうろうなどの厚手で保温性の高いお鍋があればできます。さっぱりした鶏肉とオクラに合わせたエキゾチックに香るハリッサは、辛みと酸味とうま味を同時にプラスしてくれるので、淡白な食材にアクセントを与えてくれます。
若林流 料理のポイント
・オクラの蒸しいため 厚手の鍋かフライパンに洗ったオクラを入れ(板摺りなどは不要)、塩ふたつまみをふってよく揉み込み、オイル少々・だしか水大さじ3を加えてフタをし、強火に2分かけ「蒸しいため」する。火を止め1分余熱にかけて取り出し、できればバットなどに並べて5分間冷凍庫に入れて「色止め」する。
・切り落とした端の部分は捨てずに翌日おいしくいただきます。
レシピ:鶏むね肉のオクラガランティーヌ
〜〈ファーイーストバザール〉オリジナルのハリッサを添えて
【材料】
鶏むね肉:2枚
オクラ:18本
マリネ用 塩麹:大さじ4程度
グレープシードオイル:
大さじ4程度
ハリッサ:適量
【作り方】
1.鶏むね肉は50℃程度のお湯で洗って皮を取り、スジや余分な脂肪を除いて重量の1%程度の塩をまんべんなく振り、脱水シートにくるんで2時間以上置いてから、臭みや雑味の原因である余分な水分を取り除く(このひと手間がマスト!)。
2.ジップ袋などに入れてマリネ液に漬け込み、できればひと晩寝かせる。
3.取り出して表面をキッチンペーパーなどでぬぐい、観音開き(厚みを5mm程度に均一にする)にし、横長の20cm×15cm程度の長方形になるように叩いて成型する。
4.ラップの上に広げ、中央よりも少し手前にあらかじめ蒸しいためしておいたオクラを並べ、手前からしっかりと巻いてゆき、端同士が重なるようにしてラップでキャンディ包みにして1本ずつジップ袋にいれる。
5.厚手の鍋にお湯を沸かし、80℃程度まで冷ましたところへ4.を沈め、袋の口を開けてから鶏をつついて閉じてプチ真空状態にする。
6.袋の口の部分を鍋の外側に垂らし、火を止めた状態でフタをしてそのまま30〜40分おく。
7.お湯から引き揚げてラップを外し、巻き終わりを下にして端を落とし、6つに切り分ける。
8.〈ファーイーストバザール〉のハリッサを添えて、完成です。
残った食材は無駄にしない
アレンジしてフードロスを減らしましょう
私は国連WFP「ゼロハンガーキャンペーン」アンバサダーも務めており、日頃からフードロスを減らす努力を地味に続けています。
ガランティーヌの残り肉のラグー 〜 〈セゾンファクトリー〉のショートパスタにからめて
今回は、さきほどの調理の過程で取り除いた鶏皮や切り落としたガランティーヌの端の部分を使ったアレンジレシピで、翌日のランチを楽しみましょう。鶏皮は野菜調理の際にコクを加えるのに重宝ですし、見栄えのために切り落とした端も、立派に役立ってくれますよ。
ランチのお供のドリンクには〈セゾンファクトリー〉の飲む酢をチョイスし、〈ラベイユ〉のはちみつで甘みを足しました。
レシピ:ガランティーヌの残り肉のラグー 〜 〈セゾンファクトリー〉のショートパスタにからめて
【材料】
ガランティーヌの残り肉
調理の過程で取り除いた鶏皮
その他お好みの野菜など適宜
【作り方】
1. 玉ねぎ・セロリ・にんじんなどのミルポワ(香味野菜)、前日のカリフラワーの茎の部分や切り落としたオクラの端など余り野菜、ピーマンやパプリカなどお好きな野菜も加えて全て粗く切り、潰したにんにく、成型するときに除いた鶏皮と共に鍋やフライパンに入れて蒸しいためして取り出しておく。
2.
そのフライパンにトマトケチャップを加えてしっかり炒め、トマトピュレかトマトジュースを注ぎ、ウスターソース、醤油各少量、塩こしょう適量も加えてしっかり半量程度になるまで煮詰める(この時、ベーコンを加えるとよりコクが増します)。
3. そこへ野菜と鶏肉(鶏皮は使いません)を戻して味を馴染ませたら、ブレンダーなどで細かくする。
4. ペンネやフジッリなどのショートパスタを茹でてこのソースをからめる。
3回に渡ってのグルメの連載、いかがでしたでしょうか?
身体に良い、環境に優しいお料理も、美味しくなければいただく時に「幸せ」を感じることができません。「美味しく作る」ためのひと手間を惜しまないことが、私の幸せの源だと思っています。
人を幸せにできる最もシンプルな方法が料理です。食卓から拡がる幸せを大切にしてゆきたいと、願い続けています。
若林三弥子 MIYAKO WAKABAYASHI
同志社大学法学部法律学科卒業後、商社に勤務。 結婚後、夫の転勤に併って中近東・南米各国で生活。専業主婦として、料理の腕と、おもてなしのセンスを磨く。2005年、北鎌倉の自宅にて、料理教室『boa mesa』(ボアメーザ。ポルトガル語で”素敵な食卓”の意味)を始める。“8人1クラス”のデモンストレーション形式で行われる人気の料理教室には、450人の生徒が通い、さらに1,000人以上がキャンセル待ちをしている(現在はコロナ禍のためお休み)。YouTube「おくちにあえば、うれしいです」も好評配信中。日々のエッセイやおうちごはん公開、レシピ動画などはオンラインサロン「Familia boa mesa」で毎日公開している。
※掲載品は2021年11月30日時点の取り扱い商品・価格です。商品の内容や価格は変更になる場合がございます。
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