ファインアートコレクション|松坂屋名古屋店
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27「薔薇」 4F林武全画集No.Ⅰ-250所載東美鑑定評価機構鑑定証書 「婦人像」 4F 1977年小磯良平鑑定委員会鑑定書 小磯良平 (1903~1988)1977年、小磯74歳時の作品。その6年前に東京藝術大学教授を退官、制作に余念のない日々であった。この時期以降の作品では、それ以前の作品にしばしば見られた意図的と思われる背景の塗り残し、モチーフの部分的省略が少なくなり、描かれているモチーフ間の緊密度が増している。本作も小品ながら、円熟期の特徴をよく示している。林 武 (1896~1975)林が東京藝術大学教授を務めていたころ、授業で学生のデッサンを見ていて、後ろからグイッと木炭の太い線で直しを入れてしまうことがあり、その後収拾がつかなくなるので学生が困った、という話がある。本作は、そのエピソードを思い起こさせるような、太い輪郭線が特徴的である。独自の絵画理論を持ち、様々な作風を展開した林であるが、本作は赤の使い分け、色の配置、絵具の足し引きの見事さでいかにも林らしい仕上がりとなっている。

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