キング・オブ・シューズ、
「ジョンロブ」と共に歩む道

文/森下隆太
2021/4/6

John Lobb

フィリップⅡ

既製靴の最高傑作とも呼ばれる
ブランドを代表するモデル
「フィリップⅡ」

おそらく、名前は聞いたことがある、という方がほとんどだと思います。今回紹介するのは「革靴の最高峰」「キング・オブ・シューズ」など、最上級の修辞を用いて語られる「ジョンロブ」の一足です。創業は、1866年。ロンドンの目貫通りのひとつリージェント・ストリートにショップを開いたのがはじまりです。現在、エルメス傘下の「ジョンロブ」は、最高品質のレザーを武器に、堅実な職種のビジネスマンから、職人技に惚れ込むファッションラバーまで、多くの顧客を抱え、その足元を支え続けています。

その歴史の長さゆえ、数々の名作が存在するのですが、ピックアップしたのは「フィリップⅡ」というモデルです。これは初めて「ジョンロブ」に触れる方に勧められることが多いモデルで、その理由は”使いやすさ”と”美しさ”にあります。まずは、デザイン。キャップトゥに、控えめな装飾(パーフォレーション)が入り、オンオフ問わずに使え、ドレッシーなボトムスであればなんでも、素材を問わずに合わせることができます。細かい部分ですが、靴の”くびれ”とも呼ばれる土踏まずの部分が、美しく絞り込んであり、これが色気やエレガントさを演出します。

次に素材、レザーです。「ジョンロブ」にはもうひとつ、ストレートチップの不動の人気モデル「シティⅡ」と呼ばれるものがあるのですが、「フィリップⅡ」は、そちらよりも柔らかいレザーが使われています。これが軽快な履き心地につながり、長時間履いていても疲れづらい効果を生み出します。ちなみにⅡというのは、木型の変更に伴うもので、現在使われている7000番ラストは、丸みを帯びたトウと華奢なヒールが特徴。足を美しく包み込み、優しく歩行をサポートします。

最高峰のシューズブランドにあって、もっとも汎用性の高い一足といっても過言ではないでしょう。作成は、靴作りが盛んなイギリス・ノーサンプトンにて、およそ190段階もの工程を経て作られています。「ジョンロブ」には、受け継がれる木型と職人技と哲学があります。「フィリップⅡ」はその世界観を足元で感じられる一足。2年3年と履き続けることで愛着も湧き、特別な一足へと変わっていくことでしょう。

手作業によるベヴェルドウエスト(上述した”くびれ”の部分)、細かなパンチングを施したキャップトゥ、縫い目のないシームレスバックなど、ビスポークの要素を取り入れたディテールに注目です。足元から堂々としたオーラを醸し出せます。

ジョンロブ

フィリップⅡ 税込264,000円

/北館1階

※数に限りがございますので、品切れの際はご了承ください。

ファッションエディター

森下 隆太

Ryuta Morishita

1986年熊本県生まれ。早稲田大学卒業後、編集プロダクションを経て、雑誌「HUgE」「MEN’S CLUB」の編集に携わる。現在はフリーランスとして広告やカタログ、雑誌を中心に活躍中。ファッションのみならず、文学、映画など様々なカルチャーをこよなく愛する。